2013 年 46 巻 12 号 p. 894-900
症例は32歳の男性で,心窩部痛,嘔吐を主訴に近医を受診し,精査を行うも異常所見を認めなかった.その後腹痛が増強し,腹部X線検査で小腸niveau像を認めたため当科に紹介,入院となった.初診時,WBC 12,350/μl(好中球78%),CRP陰性であった.第4病日,保存的治療での症状の改善を認めなかったため,原因不明の腸閉塞の診断で試験開腹術を施行した.術中所見では後腹膜から小腸間膜に向かう炎症性の索状物を認め,回盲弁から約1 m口側の回腸が陥入していた.索状物は硬結を伴っていた.硬結を含め索状物を切除し,通過障害を解除した.病理組織学的検査所見で広範な好中球浸潤を伴う壊死組織の内部にアニサキス虫体を認め,消化管外アニサキス症による癒着性イレウスと考えられた.本症の報告はまれとされる.本症の術前診断は容易でないが,腸閉塞の一因として念頭に置く必要がある.