2015 年 48 巻 3 号 p. 255-263
症例は51歳の男性で,左下腹部痛および意識消失を主訴に受診された.腹部CTで血性腹水を認め入院となった.Dynamic CTで左胃大網動脈の多発動脈瘤と周囲の血腫を認め動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断された.動脈瘤の成因は臨床的にsegmental arterial mediolysis(以下,SAMと略記)と診断した.待機的に腹部血管造影検査および経カテーテル的動脈塞栓術(以下,TAEと略記)を行った.術後6か月の腹部CTでは塞栓していない動脈瘤の自然消失を認めた.胃大網動脈瘤は非常にまれな疾患で,その成因の一つとしてSAMが挙げられる.SAMは破裂による腹腔内出血で発症することが多く,開腹手術が行われてきたが,TAEの報告例が増えてきている.本症例では破裂動脈瘤に対し,安全・低侵襲にTAEを行えた.また,未破裂動脈瘤の自然消失を認め,今後の治療戦略構築の一助となると考えた.