日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
若年発症の直腸癌を契機にTP53遺伝子変異を持つLi-Fraumeni syndromeの家系と判明した1例
松岡 義篠崎 浩治小澤 広輝中西 亮清水 徹一郎石田 隆寺内 寿彰木全 大小林 健二尾形 佳郎
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2016 年 49 巻 11 号 p. 1170-1178

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抄録

 患者は17歳の女性で,3か月前からの下腹部痛,血便を主訴に来院した.下部消化管内視鏡検査で直腸S状部に全周性狭窄を認め,生検でadenocarcinomaが認められた.腹部CTで遠隔転移を認めず,cStage IIIaの直腸癌の診断で,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.最終診断はStage IIIbの直腸癌で術後補助化学療法を外来で施行した.若年発症の悪性腫瘍であり,兄が骨肉腫で死亡,母親が上顎骨骨肉腫,右乳癌,延髄神経鞘腫に罹患した家族歴があることから,Li-Fraumeni 症候群の家系の可能性を考え遺伝子解析を行った結果,患者と母親にTP53遺伝子の変異が認められた.同症候群は常染色体優性遺伝の形式をとり,非常にまれであり,世界での報告は400家系程度で,TP53遺伝子の関連が報告されている.若年発症の悪性腫瘍では,遺伝性悪性腫瘍の検索を考慮すべきである.

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