2016 年 49 巻 9 号 p. 857-866
症例は71歳の男性で,HER2陽性4型胃癌に対し審査腹腔鏡検査を施行した.SE N1 M1 P1 CY1 Stage IVにてtrastuzumabを含む化学療法を行った.再度審査腹腔鏡検査で腹膜播種消失を確認後,胃全摘(D2),脾摘術を施行した.病理組織診はpor SM N0 M0 P0 CY0 Stage IAで,術後にS-1+trastuzumabを投与した.術後8か月より嘔気が出現し,CEA上昇を認めた.胸腹部造影CTで再発所見はなかった.意識レベルの低下で近医に緊急入院となった.頭部造影MRIで小脳,中脳,右側側頭葉内側の軟膜に異常濃染を認めた.感染所見はなく感染性髄膜炎は否定的で,経過より髄膜癌腫症と診断するも発症12病日に死亡した.胃癌の髄膜癌腫症はまれで極めて予後不良である.症状も多彩で診断に苦慮することが多い.脳症状・神経症状を認めた場合は髄膜癌腫症を念頭に精査する必要があると考えられた.