日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
症例報告
門脈左右分岐部の欠如を伴う肝細胞癌の1切除例
田中 元樹白木 孝之櫻岡 佑樹加藤 正人青木 琢窪田 敬一
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2017 年 50 巻 8 号 p. 656-663

詳細
抄録

 症例は60歳の男性で,右季肋部痛を主訴に前医を受診した.CTにて肝両葉に多発する小さな肝細胞癌(hepatic cell carcinoma;HCC)と肝S6に14 cm大のHCCを認めた.また,門脈が左右に分枝せず,右枝がそのまま本幹となって後区域枝を分岐したのちに頭腹側にカーブを描きながら左葉に向い走行し,門脈臍部に連結する「門脈左右分岐部の欠如」という先天奇形を認めた.この奇形は門脈右枝を切除すると全肝の門脈血流が絶たれ,致死的な合併症を起こすため右葉切除,門脈塞栓術の際には注意が必要であるとされている.我々は肝動脈化学塞栓療法後,減量手術としてS6部分切除術を施行した.この奇形は外観上正常肝であり,術中USを用いないと術中診断も難しいため,術前診断が必須となる.安全な肝切除を行うためにも術前スクリーニングとして普段から3D構築を行い,手術のシミュレーションを行うことが必要であると考えられた.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top