2018 年 51 巻 10 号 p. 607-612
孤立性腹部内臓動脈解離は比較的まれな疾患で,同疾患に胃癌を合併し胃切除術を行った報告は過去にはなかった.今回,我々は術前CTにて無症状で発見された腹腔動脈解離と脾動脈解離を伴う58歳男性の早期胃癌に対して,D1郭清を伴う腹腔鏡下幽門側胃切除術を安全に施行した.術後合併症なく退院し,術後7か月経過観察中である.腹部内臓動脈解離を伴う胃癌手術では,腹腔動脈・総肝動脈・脾動脈周囲リンパ節を郭清する際に,電気メスや超音波凝固切開装置などのエネルギーデバイスでの熱放散による血管損傷や動脈瘤などに十分配慮し手術を遂行することが重要と考えられた.