2018 年 51 巻 10 号 p. 613-621
症例は79歳の男性で,人間ドックの腹部超音波検査で肝S2に2.5 cm大の腫瘤性病変を指摘された.同病変は腹部造影CTでの動脈相で造影され,門脈相でwash outを呈し,腫瘍内には脈管の貫通像を認めた.また,総肝動脈周囲には腫大したリンパ節を認めた.PET-CTでは肝腫瘤と総肝動脈周囲のリンパ節に一致してFDGの集積が亢進していた.術前診断として細胆管細胞癌,悪性リンパ腫を考え,前者を疑って肝外側区域切除を施行したが,術後の病理診断でmucosa-associated lymphoid tissue(以下,MALTと略記)リンパ腫と診断した.肝原発MALTリンパ腫はまれであり,画像での特徴がなく診断に苦慮することがある.転移や浸潤を認める症例は少なく,予後が良好な疾患とされるが,術後長期間経過して再発することもあり,術後慎重な経過観察が必要である.