2020 年 53 巻 1 号 p. 91-97
肝門部領域胆管癌に対して行った手術の記録を提示する.本症例の腫瘍は上部胆管に位置し,背側を走行する右肝動脈に浸潤があるとの術前診断であった.本症例では外側区域のほとんどを占める巨大な血管腫が存在し,腫瘍の動脈浸潤範囲は前区域枝と後区域枝との分岐部をこえていたため,左三区域切除,動脈再建,胆道再建を施行した.動脈再建にあたっては郭清操作で右肝動脈の内膜剥離を認めたため,後上膵十二指腸動脈を分岐したあとの胃十二指腸動脈を用いて顕微鏡下に端々吻合で再建した.手術時間は10時間31分,出血量は2,400 gであった.肝胆道外科は特に立体的な空間認識力が必要な分野であると思われる.手術イラストには,臓器や組織の相対的位置関係の正確さを保ちつつ,省略と強調が必要である.術式に対する理解や認識力があって初めて簡明でリアルなイラストを描くことができ,読む人にわかりやすい手術記録を作成することができる.