2020 年 53 巻 4 号 p. 321-328
症例は39歳の女性で,貧血を主訴に当院を紹介受診した.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部後壁に2型腫瘍を認め,病理組織学的に腺癌と診断した.全身CTでは明らかな遠隔転移を認めず,根治目的で膵頭十二指腸切除術を施行した.手術検体の大部分は組織学的に胎児消化管類似癌の像を示し,その一部は免疫染色検査でAFP陽性であった.また,腫瘍全体の5%ほどではあるが,神経内分泌への分化が認められた.腫瘍は十二指腸球部中心に存在していたが,通常型中分化型管状腺癌に相当する領域を幽門付近の胃粘膜に認め,胃癌の十二指腸浸潤と診断した.幽門輪口側の粘膜下層から筋層内に異所性胃腺および異所性膵を認めた.術後1年8か月無再発経過観察中である.