2020 年 53 巻 9 号 p. 749-753
手術記録は診療録の一部として保管される公的文書であり,外科医の覚書の類とは明確に区別して考えなければいけない.取扱い規約に沿った所見は漏らさず記録することが重要で,後々のデータ整理の際に記録漏れで困ることがないよう手術記録のフォーマットを予め用意しておいた方がよい.そして手術記録はFigureを重視し紙芝居のごとく手術の流れが感じられるように作成することで,紹介元の内科系の先生方でも手術内容が容易に理解できるよう心掛けている.また,Figureを重視した詳細な手術記録を作製することはoff the job trainingの一環にもなる.筆者は術前から手術記録の下絵描きを開始し手術シミュレーションを入念に行うことで解剖の理解を深めることが可能となり,結果として術前準備の質が上がると考え実行している.術後はその下絵をもとに手術記録を作成することで,術前の予想と実際の術野の違いがより明確となり,副産物として記録作成時間の短縮を得ることもできる.手術記録には,記録漏れのない公的文書として役割,作画を重視し誰もが理解できる紙芝居としての役割,そして入念な術前準備を通して個人的な外科修練としての役割が込められている.