日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
大腿ヘルニア手術を契機に診断した悪性腹膜中皮腫の1例
村澤 哲也陳 孟鳳鳥取 洋昭二木 元典谷岡 保彦川島 市郎鈴木 卓藤田 葉子
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2021 年 54 巻 2 号 p. 141-148

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抄録

症例は83歳の男性で,腹痛と左鼠径部腫瘤を主訴に当科紹介受診した.左鼠径靱帯尾側に,緊満し圧痛を伴う腫瘤を触知した.腹部CTで左鼠径靱帯尾側に小腸脱出と,腹腔内に多数の大小不同な不整形腫瘤を認め,左大腿ヘルニア嵌頓と診断し大腿法で緊急手術を施行した.ヘルニア内容は小腸とそれに付着する類円形の硬い結節であった.結節を部分切除し組織検査へ提出し,ヘルニアを修復した.病理組織診断は二相性の悪性腹膜中皮腫であった.術後8日目に退院したが,腹部膨満が急激に増悪して術後16日目に再入院し,術後26日目に死亡した.悪性中皮腫は体腔を覆う中皮細胞より発生するまれな腫瘍であり,胸膜,腹膜,心膜,精巣漿膜に発生する.腹膜原発は全中皮腫の10~20%で症状が非特異的であり,診断が非常に困難とされている.今回,左大腿ヘルニア嵌頓を契機に診断した悪性腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する.

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