日本消化器外科学会雑誌
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54 巻 , 2 号
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症例報告
  • 田妻 昌, 杉山 陽一, 新原 健介, 馬場 健太, 田崎 達也, 香山 茂平, 佐々木 秀, 臺丸 裕, 中光 篤志
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    症例は53歳の男性で,発熱,左腰背部痛を主訴に受診した.血液検査での白血球数の増加とCRP値の上昇,および腹部造影CTでは胃体部の壁肥厚と複数の肝膿瘍を認め,抗菌薬,プロトンポンプ阻害薬による保存的治療を開始した.上部消化管内視鏡では胃体中部の潰瘍性病変を認め,生検にて中分化管状腺癌が確認された.肝膿瘍形成を伴う進行胃癌と診断し,膿瘍縮小後に開腹胃全摘,肝外側区域切除,横隔膜部分切除術を施行した.病理組織学的診断では胃癌pT4b(SI),pN2,pM1(LYM),pStage IVであった.胃癌の潰瘍底にグラム陽性桿菌を検出し肝膿瘍の起因菌と診断した.術後化学療法を開始し,52か月経過した現在再燃なく外来経過観察中である.消化管癌を背景とした肝膿瘍は,特に胃癌が原因となることはまれであるが,胃癌併存の可能性も考慮し画像所見を見落とさないことが重要と考えられた.

  • 松尾 祐太, 湯浅 康弘, 福田 美月, 牧 秀則, 竹内 大平, 常城 宇生, 森 理, 江藤 祥平, 藤原 聡史, 富林 敦司
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    症例は36歳の男性で,下血,意識消失を主訴に紹介された.貧血,血圧低下を認めたため,緊急上部消化管内視鏡検査を行った.十二指腸下行脚背側に出血性の静脈瘤を認め,内視鏡,およびballoon-occluded retrograde transvenous obliteration(B-RTO)では止血困難であったため,開腹止血術を施行した.静脈瘤を十二指腸壁ごと縫縮し,術中内視鏡,interventional radiology(以下,IVRと略記)にて静脈瘤への供血がないことを確認した.本症例では肝硬変などの基礎疾患や,門脈圧亢進症を示唆する所見を認めない,孤立性の十二指腸静脈瘤であり,その報告はまれである.静脈瘤の治療は,内視鏡やIVRが第一選択となるが,止血困難例では外科的治療の適応であり,その場合,hybrid手術室での手術が有用と思われる.

  • 野口 彩, 吉田 寛, 川口 信哉, 橋本 明彦, 白相 悟, 藤川 奈々子, 土師 陽一, 志村 充広, 遠山 慎吾, 浅野 重之, 新谷 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    症例は62歳の女性で,糖尿病教育入院中の腹部超音波検査で,肝S4に24 mmと22 mm大の低エコー腫瘤を認めた.同病変は造影CTの動脈相で淡く造影され,平衡相では周囲の肝実質よりやや低吸収域を呈した.経動脈的門脈造影下CT,MRIでは肝S1にも8 mm大の病変を認めた.多発肝細胞癌と診断し,肝切除の方針とした.術中に肝S1病変は同定できず,肝内側区域切除術を施行した.病理結果からmucosa-associated lymphoid tissue(以下,MALTと略記)リンパ腫と診断した.術後リツキシマブ療法により肝S1病変は消失し,術後3年9か月無再発生存中である.肝原発MALTリンパ腫はまれな疾患であり,標準治療は確立されていない.既報では手術単独療法が多く,集学的治療に関する報告は少ない.本症例の治療経過から,術後の追加治療としてリツキシマブ療法が有効である可能性が示唆される.

  • 金澤 あゆみ, 木村 康利, 今村 将史, 永山 稔, 山口 洋志, 伊東 竜哉, 信岡 隆幸, 藤野 紘貴, 吉田 瑛司, 大沼 啓之, ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 2 号 p. 107-117
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    重複胃癌に対する術前治療が著効し,病理学的完全奏効を得られた肝門部領域胆管癌の1例を経験したので報告する.症例は36歳の男性で,肝門部領域胆管癌(Bismuth-IV,cT3N1M0,cStage IIIB),噴門部胃癌(cT3N1M0,cStage IIB)の重複癌と診断された.残肝容積率が過少であり経皮経門脈塞栓術(percutaneous transhepatic portal vein embolization;以下,PTPEと略記)を施行,待機期間中に胃癌に対する術前治療として全身化学療法(modified DCS)を施行した.PTPE実施210日後に一期的根治術として肝右三区域切除術,胆管切除術,領域リンパ節郭清,胃全摘術を施行した.病理組織学的診断は,胆管癌(ypT0N0M0,Stage 0,前治療効果 Grade 3),胃癌(ypT3,N1,M0,Stage IIB,前治療効果Grade 2)となった.胃癌の術後補助化学療法(S-1)を行い,術後34か月無再発生存である.

  • 楠原 達樹, 伊藤 卓資, 松岡 宏樹, 大西 隆仁
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    症例は69歳の女性で,腹部USで胆囊底部に18 mm大の腫瘤像と造影CTで同部位に早期濃染される隆起性病変を指摘され,胆囊癌の疑いで開腹胆囊摘出術が施行された.摘出胆囊の割面に充実成分と囊胞成分からなる腫瘤を認め,術中迅速診断で腺癌と診断された.肝床切除術・2群リンパ節郭清を施行した.腫瘍の大部分は拡張した囊胞内にあり,囊胞上皮を乳頭状に内反性に進展し,充実成分の基部で漿膜下層への浸潤を認めた.組織学的診断はintracholecystic papillary neoplasm(以下,ICPNと略記)with an associated invasive carcinomaとした.囊胞は腫瘍産生粘液が充満し拡張したRokitansky-Aschoff洞(以下,RASと略記)と推測した.RASより発生・進展したICPNはまれであり報告する.

  • 服部 陽, 松葉 芳郎, 間宮 俊太, 飯田 義人, 松田 充宏, 山崎 将人
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    腹腔動脈(celiac artery;以下,CAと略記)起始部閉塞例に対する膵頭十二指腸切除術では,本来CAにより供血される臓器の血流が問題となる.症例は72歳の男性で,黄疸精査の結果十二指腸乳頭部癌の診断となった.造影CTにてCA起始部の造影欠損と“hooked appearance”および発達した膵頭部アーケードを認めたため,正中弓状靭帯圧迫によるCA起始部閉塞合併と診断した.術中血流評価は超音波ドプラー検査で行い,正中弓状靭帯の切開を行ったが総肝動脈の順行性血流再開を得られなかったため,前下および前上膵十二指腸動脈を介した上腸間膜動脈からの側副血行路を温存した切除を実施した.術後臓器虚血を合併することなく経過し,以降2年間無再発生存中である.CA起始部閉塞例に対する側副血行路温存切除は慎重な症例選択により安全に実施可能であり,血行再建以外の選択肢として考慮に値する.

  • 廣高 健斗, 森 泰寿, 大塚 隆生, 渡邉 雄介, 池永 直樹, 仲田 興平, 中山 智博, 崎濱 久紀子, 松田 諒太, 小田 義直, ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    症例は45歳の女性で,健診のUSで膵頭部の主膵管狭窄と尾側膵管の拡張を指摘された.CT,MRIで主膵管狭窄部に4 mmの早期濃染を呈する多血性腫瘤を認めたが,超音波内視鏡下穿刺吸引法およびERCP下に行った細胞診では確定診断に至らなかった.腫瘤は境界明瞭で早期濃染を呈していることから膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor;以下,PanNETと略記)と診断した.さらに,腫瘍径が小さいにもかかわらず主膵管狭窄を伴うことからセロトニン産生性PanNETを疑い,腹腔鏡補助下膵頭十二指腸切除術を施行した.最終病理診断ではセロトニン産生性PanNETであった.

  • 村澤 哲也, 陳 孟鳳, 鳥取 洋昭, 二木 元典, 谷岡 保彦, 川島 市郎, 鈴木 卓, 藤田 葉子
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 54 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    症例は83歳の男性で,腹痛と左鼠径部腫瘤を主訴に当科紹介受診した.左鼠径靱帯尾側に,緊満し圧痛を伴う腫瘤を触知した.腹部CTで左鼠径靱帯尾側に小腸脱出と,腹腔内に多数の大小不同な不整形腫瘤を認め,左大腿ヘルニア嵌頓と診断し大腿法で緊急手術を施行した.ヘルニア内容は小腸とそれに付着する類円形の硬い結節であった.結節を部分切除し組織検査へ提出し,ヘルニアを修復した.病理組織診断は二相性の悪性腹膜中皮腫であった.術後8日目に退院したが,腹部膨満が急激に増悪して術後16日目に再入院し,術後26日目に死亡した.悪性中皮腫は体腔を覆う中皮細胞より発生するまれな腫瘍であり,胸膜,腹膜,心膜,精巣漿膜に発生する.腹膜原発は全中皮腫の10~20%で症状が非特異的であり,診断が非常に困難とされている.今回,左大腿ヘルニア嵌頓を契機に診断した悪性腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する.

臨床経験
  • 石黒 保直, 箱崎 将規, 高橋 成明, 佐藤 一, 坂下 伸夫, 関澤 玄一郎, 及川 浩樹
    原稿種別: 臨床経験
    2021 年 54 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/02/26
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    進行胃癌では出血が問題になることがあり,止血目的の胃切除も行われるが,局所進行により切除が困難だったり,併存症で全身麻酔下の手術自体が実施できなかったりすることがある.当院では2013年4月から2018年3月までに出血のある進行胃癌21例に対して止血目的に放射線治療を行った.年齢の中央値は83歳で,総線量30~33 Gyを10~11回分割照射した.3例で出血コントロール後に化学療法を実施し,13例が一時退院した(生存期間中央値は108.5日).胃癌診断直後に脳梗塞を発症しactivities of daily living(以下,ADLと略記)がベッド上となった症例では,リハビリテーション期間中に放射線治療で止血を得て,ADL回復後に根治手術を行った.出血を伴う進行胃癌に対して止血目的に行う放射線治療は,適応を選べば一時帰宅や化学療法,根治手術が可能な場合があるため,治療の選択肢となりえる.

エラータ
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