日本消化器外科学会雑誌
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ISSN-L : 0386-9768
原著
Patient-reported outcomesに基づいた成人鼠径ヘルニア術後慢性疼痛の発症率とその治療
大倉 啓輔成田 匡大後藤 健太郎岡田 はるか山岡 竜也松末 亮畑 啓昭山口 高史大谷 哲之猪飼 伊和夫
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2021 年 54 巻 5 号 p. 303-312

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抄録

目的:当院の鼠径ヘルニア術後患者を調査し,鼠径ヘルニア術後慢性疼痛(chronic postoperative inguinal pain;以下,CPIPと略記)の発症率,治療希望患者について検討することを目的とした.方法:2010年4月~2016年3月に成人鼠径ヘルニア修復術を施行した592症例(617病変)に対して術後疼痛に関するアンケートを郵送し,CPIP症例には電話・外来で調査を追加した.疼痛は0~5のnumerical rating scale(以下,NRSと略記)を用いて患者報告アウトカムに基づき評価した.本研究では術後3か月目のNRS≥3の疼痛をCPIPと定義した.結果:427症例(72.9%;450/617病変)から回答を得た.CPIPの発症率は7.6%(34/450病変)で,術後1週目のNRS≥3の疼痛はリスク因子であった(P<0.001).10病変(うち9病変がCPIP)を治療し,CPIP 5病変では疼痛治療のため外来通院を継続した.他のCPIP 4病変・残り1病変(術後3か月目のNRS=2)はアンケートを契機に再受診した.治療介入した全病変でCPIPは消失もしくは改善した.結語:CPIP症例は本邦にも少なからず存在し,術後早期の疼痛管理が重要である可能性が示唆された.積極的な治療介入によりCPIPの改善が見込めるため,術後3か月間のフォローアップが必要である.

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