2022 年 55 巻 2 号 p. 115-123
びまん性悪性腹膜中皮腫は本邦では切除不能と判断し,悪性胸膜中皮腫に準じた化学療法を施行することが多い.一方海外では,腹腔内に限局し末期まで遠隔転移することが少なく,腹膜切除が有効であると報告されている.症例は64歳の男性で,腹部膨満,下腿浮腫を認めた.造影CTで多量腹水,腹膜肥厚,大網肥厚・結節が指摘され,腹水細胞診で悪性中皮腫と診断された.全腹膜切除術(直腸,回盲部,脾臓,胆囊合併切除),回腸人工肛門造設術,腹腔内化学療法を施行した.手術時,腹膜,小腸間膜,結腸間膜,大網,小網にびまん性の小隆起病変(腹膜播種係数=26)を認めた.手術は減量切除スコア=0を達成した.術後は下痢,胃内容停滞を認めたが,第45病日で退院となった.術後補助化学療法は施行せず,その後食事摂取と筋肉量も改善した.1年10か月後に再発を認め,再発腫瘍切除および術中温熱化学療法を施行し,経過観察中である.