日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
胃癌術後に発症したKounis症候群の1例
藤田 正博柴崎 晋中村 謙一中内 雅也田中 毅稲葉 一樹宇山 一朗須田 康一
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2022 年 55 巻 7 号 p. 440-448

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抄録

アレルギー反応に起因した急性冠症候群(acute coronary syndrome;以下,ACSと略記)はKounis症候群と呼ばれる.今回,我々は胃癌術後に発生したKounis症候群の1例を経験したので報告する.症例は既往歴のない60歳の男性で,胃癌の診断でロボット支援下幽門側胃切除術を施行した.術中偶発症など特になく手術は終了した.術後約6時間後に,突然HR 30台の徐脈と収縮期血圧60台への低下とST上昇を認めた.ACSを疑い緊急冠動脈造影検査を行ったが,冠動脈の狭窄所見は認めなかった.その一方で,検査前に左膝部に孤立性の膨疹が認められ,検査後に皮疹は両上下肢に広がっていた.薬剤アレルギーとそれに伴うACSであるKounis症候群と診断し,ステロイドを全身投与した.血圧は上昇し,その後のACSの再燃は認められなかった.ACSのリスクが低いにもかかわらずACSが強く疑われる際には,薬剤性アレルギーの可能性を念頭に置き迅速な対応が重要である.

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