2023 年 56 巻 11 号 p. 584-592
Killian-Jamieson憩室(Killian-Jamieson diverticulum;以下,KJDと略記)は嚥下困難などの有症状を伴う場合,外科的切除の適応となる.今回,術中に迷走神経刺激装置と消化管内視鏡を併用したKJDの1切除例を報告する.症例は64歳の女性で,咽頭つかえ感を主訴に近医を受診し,食道憩室を指摘された.プロトンポンプ阻害剤では改善を認めず,精査加療目的に当院を受診した.精査で頸部食道左側に約30 mmの憩室を認め,KJDの診断で憩室切除術を行った.左迷走神経を同定して迷走神経刺激装置を装着した.憩室を露出して,内視鏡を挿入した.切離範囲を内腔から確認してステープラーで切除し,内視鏡で狭窄所見がないことを確認した.手術中の迷走神経刺激装置の信号異常を認めなかった.術中に迷走神経刺激装置と内視鏡を併用することにより安全にKJD切除術を行うことが可能であった.