日本消化器外科学会雑誌
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56 巻, 11 号
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症例報告
  • 熱田 佳奈美, 増田 隆洋, 佐藤 和秀, 坂下 裕紀, 高橋 慶太, 原 圭吾, 宇野 耕平, 藤崎 宗春, 矢野 文章, 衛藤 謙
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 577-583
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/30
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    症例は69歳の男性で,3年前前医にて胃癌に対しロボット支援下幽門側胃切除+Billroth I法再建を施行した.術直後より胸やけと胸痛のため摂食困難となった.症状は薬物療法抵抗性であり,内視鏡で重症食道炎を認め,当院を紹介受診した.24時間多チャンネルインピーダンスpH(以下,MII-pHと略記)検査では酸逆流時間率0%,液体逆流時間率23.4%であり,十二指腸液の逆流と診断した.保存的治療では根治不能のため腹腔鏡下にRoux-en-Y法への再吻合術を施行した.胃-空腸吻合部からY脚部の空腸-空腸吻合部までの距離は50 cmとした.手術時間414分,出血量200 mlであった.術前症状は改善し術後11日で自宅へ退院した.術後2か月での内視鏡で食道炎は消失していた.今回,我々は胃癌術後重症食道炎に対してMII-pH検査を行い治療方針を決定し,外科的治療が奏効した1例を経験したため報告する.

  • 藤田 正博, 中内 雅也, 鈴木 和光, 芹澤 朗子, 田中 毅, 柴崎 晋, 稲葉 一樹, 宇山 一朗, 楯谷 一郎, 須田 康一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 584-592
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/30
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    Killian-Jamieson憩室(Killian-Jamieson diverticulum;以下,KJDと略記)は嚥下困難などの有症状を伴う場合,外科的切除の適応となる.今回,術中に迷走神経刺激装置と消化管内視鏡を併用したKJDの1切除例を報告する.症例は64歳の女性で,咽頭つかえ感を主訴に近医を受診し,食道憩室を指摘された.プロトンポンプ阻害剤では改善を認めず,精査加療目的に当院を受診した.精査で頸部食道左側に約30 mmの憩室を認め,KJDの診断で憩室切除術を行った.左迷走神経を同定して迷走神経刺激装置を装着した.憩室を露出して,内視鏡を挿入した.切離範囲を内腔から確認してステープラーで切除し,内視鏡で狭窄所見がないことを確認した.手術中の迷走神経刺激装置の信号異常を認めなかった.術中に迷走神経刺激装置と内視鏡を併用することにより安全にKJD切除術を行うことが可能であった.

  • 伊藤 一樹, 太田 義人, 碓井 麻美, 高橋 有未子, 須ノ内 康太, 西森 孝典, 黒田 浩明, 篠原 靖志, 深山 正久, 坂本 昭雄
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 593-599
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/30
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    症例は76歳の女性で,朝からの右季肋部痛と嘔気を主訴に近医を受診した.処方された内服薬を服用したが改善傾向がないため,当院に救急搬送された.腹部診察所見では右季肋部に圧痛を認めた.来院時検査所見では特記すべき異常所見を認めなかった.腹部造影CTでは胆囊は頸部と体部の移行部付近で狭窄しており,腫大した底部側胆囊では壁肥厚と造影効果の減弱を認めた.以上の所見から,胆囊捻転症と診断し,緊急腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術中所見では胆囊は腹壁から肝表面へ繋がる索状物で絞扼されており,絞扼部位より末梢側の胆囊は暗赤色に変色していたため,絞扼性胆囊炎との診断に至った.索状物を切離すると絞扼は容易に解除され,通常と同じ手順で手術を施行することが可能となった.術後経過は良好で第7病日に退院となった.絞扼性胆囊炎は,索状物により胆囊が絞扼されるまれな病態であり報告する.

  • 青山 紘希, 飯田 拓, 堀口 慎一郎, 渡辺 剛久, 松本 寛, 岡部 寛
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 600-607
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/30
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    症例は81歳の男性で,5年前より腹部CTで膵鉤部に石灰化を伴う20 mm大の囊胞性腫瘍を指摘されていたが,患者が精査を希望せず,経過観察の方針となっていた.経過中貧血の進行を認め,腹部CTでは膵腫瘍は径33 mm大に増大し,内部の石灰化はびまん性に増加していた.上部消化管内視鏡検査では十二指腸水平脚に腫瘍性病変の露出を認め,生検結果より浸潤性の膵管内乳頭粘液性癌と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では,主膵管に乳頭状に増殖する膵管内乳頭粘液性癌細胞を認め,周囲への間質浸潤像とともに間質内には明瞭な骨化生像が散在性にみられた.術後合併症なく経過し第19病日に退院した.術後7か月現在,明らかな再発所見は認めていない.膵管内乳頭粘液性腫瘍における骨化生は非常にまれな病態であり,骨形成の誘導については不明な点が多くその病態解明にはさらなる症例の蓄積が必要である.

  • 上田 翔, 小林 敏樹, 西谷 健太, 多田 誠一郎, 高柳 智保, 川守田 啓介, 橋本 洋右, 米沢 圭, 前田 賢人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 608-614
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/30
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    本邦における腎移植件数は増加しているが,腎移植後の鼠経ヘルニア手術を経験することはまれである.症例は60歳の男性で,右腸骨窩に腎移植の既往があるが廃絶し透析管理となっている.右内鼠経ヘルニア嵌頓で受診し,用手還納したが3日後に小腸の浮腫による腸閉塞を認めた.腸壊死の所見は認めず保存的治療で軽快した.初診時から30日後に腹腔内到達法による腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術(transabdominal preperitoneal approach;以下,TAPPと略記)を施行した.観察できる範囲で小腸に異常所見は認めなかった.腹膜前腔には癒着を認め解剖の同定が困難であった.ヘルニア門のみメッシュで被覆し尿管,移植腎は損傷せず手術を終了した.腎移植後の移植側鼠経ヘルニアに対するTAPPは熟練した術者であれば選択肢となるが,腹膜前腔の剥離が少ないLichtenstein法が推奨されると思われた.

  • 財津 雅昭, 植村 一仁, 三國 夢人, 石塚 千紘, 南波 宏征, 谷 安弘, 花本 尊之, 外丸 詩野, 松岡 伸一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 615-621
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/30
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    症例は68歳の男性で,腹痛を主訴に他院を受診したところ,腹部エコーでtarget sign様所見があり腸重積を疑い当院へ紹介となった.上部,下部消化管内視鏡検査では明らかな腫瘍性病変はなかったが,造影CTおよび腹部USで回腸に約4 cmの腫瘍性病変および近傍の腸間膜リンパ節の腫大を認めた.小腸原発腫瘍の診断で開腹をしたところ,回腸末端から約50 cmの部位に腫瘍性病変を認め腸間膜リンパ節の腫脹も確認されたので小腸部分切除,リンパ節郭清を施行した.病理組織学的検査で小腸原発肝様腺癌の診断となった.術前の血液生化学検査でCA19-9は1,179 U/mlと高値を示したが,術後2か月目には78.6 U/mlまで低下した.しかし,術後4か月目に門脈腫瘍栓および肝転移が確認され,術後6か月後に癌死した.希少癌である小腸癌のなかでもまれである肝様腺癌を経験したので報告する.

  • 吉村 昂平, 吉田 祐, 岡田 俊裕, 中右 雅之, 杉原 洋行
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 622-632
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/30
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    症例は62歳の女性で,腹膜播種陽性直腸癌に対する原発巣切除後,腰痛を主訴に来院した.来院時に播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome;以下,DICと略記)を発症していた.脊椎MRIと骨髄生検の結果から直腸癌による播種性骨髄癌症と診断し,救命目的にFOLFOXIRI/bevacizumab療法を導入した.導入後,腫瘍マーカーの著減を認め,3クールでDICを離脱し一時退院を果たした.しかし,全身状態の改善に乏しく,帰院後4クール目の投与前にせん妄症状が出現したため治療継続を断念し,緩和ケアに移行した.その後化学療法開始から約3か月後に癌死した.大腸癌播種性骨髄癌症の予後は極めて不良であるが,緊急の化学療法が一時的だが有効性を示した.しかし,長期生存までは得られず,より迅速な治療介入の重要性が示唆された症例であった.

  • 笹本 彰紀, 大澤 一郎, 高嶋 伸宏, 馬場 卓也, 岩本 久幸, 鳥居 隼, 戸崎 達, 山田 典和, 並木 完憲, 池部 大
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 633-641
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/30
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    症例は糖尿病,高血圧の既往がある90歳の男性で,肛門部の違和感を主訴に近医を受診した.直腸癌が疑われ生検が施行されたが悪性の診断は得られなかった.潰瘍底の急速な壊死の進行と,肛門部疼痛を来し手術目的に当科紹介となった.直腸診では11時を中心に肛門から一部突出する可動性のある2型腫瘍を認め,造影CTでは病変部の濃染を認めた.悪性腫瘍の診断は得られていないが直腸癌を疑い,肛門部疼痛が強く,患者・家族の強い希望もあり,準緊急にD2郭清を伴う腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本所見では肛門管から肛門縁に突出する5×5 cmの周堤を伴う潰瘍性病変を認め,組織免疫学的にEpstein-Barrウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍と最終診断した.術後30か月の現在,無再発生存中である.非常にまれな肛門皮膚に発症した高齢者Epstein-Barrウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍の1例を経験したので報告する.

編集後記
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