抄録
外胆汁瘻を設置した胆道手術例より, 術後経時的に胆汁を採取し, その胆汁酸組成の変動を薄層クロマトグラフィーにて分析した.
術前に肝障害のない症例, 肝障害が軽度で手術により改善した症例では, G/T比は, 術後10日目頃までに上昇した. 外胆汁瘻よりの胆汁酸喪失を代償するために肝臓における胆汁酸合成が亢進したためと考えられ, T/D比も上昇した. 術後肝障害の改善が遅延した症例では, G/T比の上昇も遅延した. 切除不能な悪性胆道疾患, 肝硬変症等では, G/T比, T/D比とも低値が持続し, これは肝臓において十分な代償作用が働かなかったためと考えられた.