抄録
噴門部胃癌191例のうち, 手術後の吻合部断端再発17例について検討し, 次の結果を得た.(1) 食道への胃癌浸潤先進部は, 粘膜深層より深部の食道壁にあることが多く, 術中の全層の迅速組織診は重要である.(2) 食道への浸潤の長さは, 固定標本で最長8cmのものもあり注意を要する.(3) ow (-) 例でも断端再発がみられたが, 組織学的癌浸潤先端から固定標本で2.1cm以上口側で切除されたものには断端再発がなかった.(4) 食道浸潤例では, 肉眼的腫瘍縁より, 浸潤型では限局型よりも, またリンパ系侵襲高度なものでは軽度なものよりも, より広く口側への浸潤が及んでいた.(5) 食道への癌浸潤部を十分切除するには, 右開胸が最も良い.