抄録
各種迷切術を伴う手術の術前後症例 (38名) にインスリン低血糖による迷走神経刺激を行い, 膵グルカゴン (IRG), ヒト膵ペプチド (HPP) の血中動態を比較検討した. IRGは低血糖発来の後, 術前, 選近迷切, 選迷切+幽門洞切除, 胃全摘のいずれの群でも増加した. しかし前三群での増加に比べ, 必然的に全幹迷切となる胃全摘群ではこの反応が有意に低下した. HPPは術前では低血糖の発来と同時に著明に増加した. この増加反応は術前>選近迷切>選迷切+幽門洞切除となり, 全摘群ではほぼ無反応であった. 以上より, IRG分泌調節には迷走神経膵枝が関与しているが, HPP分泌調節には膵枝だけでなく胃枝も影響する可能性が示唆された.