日本消化器外科学会雑誌
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食道静脈瘤合併肝細胞癌の治療経験
渡辺 義二竜 崇正神津 照雄尾崎 正彦山本 宏高橋 正信桜庭 庸悦山本 義一浅野 武秀平沢 博之碓井 貞仁原 輝彦平嶋 毅小高 通夫佐藤 博
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1983 年 16 巻 9 号 p. 1666-1673

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抄録

1978年1月より1982年11月まで当科および関連施設にて経験した肝細胞癌は63例でうち食道静脈瘤合併肝細胞癌は28例 (44.4%) である.
28例中10例に対して食道静脈瘤および肝細胞癌に対して治療を行った.肝細胞癌に対しては肝切除, Transcatheter arterial embolization (TAE), 持続動注などを, 食道静脈瘤に対して脾摘, 内視鏡的硬化療法, 経皮経肝食道静脈瘤塞栓術 (PTO) を適宜に取捨選択して施行した.(1) 術前に硬化療法, PTOを施行し, 後に肝切除を行った2例は術後早期の食道静脈瘤破裂は回避でき経過良好である.(2) 肝切除+脾摘を施行した5例中4例は術後経過良好で全例に血液像の改善が認められ, また食道静脈瘤の改善が認められる症例もあった.(3) 非手術例4例ではTAE硬化療法, PTOを施行した1例が2年7ヵ月生存した.
食道静脈瘤合併肝細胞癌の治療として一期的に行うことが望ましいが過大侵襲となる危険があるので術前に内視鏡的硬化療法, PTOを施行し, 術後早期の食道静脈瘤破裂を防止し, 安全確実な肝切除術を施行する.Hypersplenismを合併している症例は手術時脾摘を追加する.
術後経過中に食道静脈瘤よりの出血を認める場合には硬化療法, PTOを優先させ止血傾向が認められない場合には直達手術を考慮するという方針である.

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