抄録
膵全摘後7例の患者に対して総および遊離insulin値をPolyethylene glycol法にて経時的に測定し, その差をinsulin抗体量の指標として血糖値の変動との相関を検討した.その結果5例は抗体量の著明な増加とともに過血糖を, うち4例には低血糖をも頻発するようになった.うち2例はinsulin製剤の変更とともに抗体量は低下し血糖controlは安定化した.抗体はすべてIgG globulinであった.insulin負荷テストにおいて, 抗体存在下では遊離insulinの半減期は遅延しており, これが過・低血糖の頻発した一因と考えられた.また一旦発生した低血糖に対して, 血糖上昇作用を有するホルモンの反応は不良で, これが低血糖からの回復能に乏しい理由と考えられた.