1988 年 21 巻 8 号 p. 2080-2089
リニア型超音波内視鏡 (EUS) では食道から噴門部の縦軸方向の画像がえられることを用いて, 下部食道胃境界領域の画像について検討した. EUS上, hyperechoicなsm層が肥厚, 明瞭化する点を食道胃粘膜接合部の目安にできること, 胃壁と大動脈との間に描出されるhypoechoicな横隔膜筋脚の口側先端を食道裂孔部と同定できることを明らかにした. これを応用して, 噴門癌の口側浸潤診断を試みた. 術前EUSで腫瘍口側と食道裂孔部との位置関係が描出でき, かつ標本echoとその組織学的対比の可能であった上部胃癌14例について検討した. 術前EUSで癌口側端が食道裂孔部を越えて描出された症例は, 開胸術式を必要とした. 上部胃癌の診断に際しては従来のx線, 内視鏡所見からだけではなく, EUSから見た癌口側端と食道裂孔部との位置関係からも術式を検討すべきと考えられた.