1989 年 22 巻 5 号 p. 1084-1092
イヌの門脈左枝に塞栓物質としてGelfoamを用いて門脈塞栓術を行い, 塞栓術の肝におよぼす影響について検討した. 門脈塞栓術後右葉は著明な代償性肥大をきたし, 術後2週目で最大となったが, 左葉は萎縮するため全肝重量は術後8週目までほぼ一定であった. 門脈の再疎通所見は術後2週目から始まり, 4週目では著明となったが, Gelfoam powderの方がcubesより再疎通は起こり難かった. また肝血流量については右葉は術後4週目まで有意に増加した. 血清生化学検査値では術後2週目で術前に復し, 門脈塞栓術による肝機能障害は軽度であった. 以上より塞栓物質としてはpowderの方がcubesよりも好ましく, 門脈塞栓術後の肝再生は十分期待できると思われた.