1989 年 22 巻 5 号 p. 1098-1101
現在までに腺管上皮由来の膵癌171例を経験し, 切除例は61例 (35.7%) であった. それらのうち術前の画像診断または手術所見で門脈に浸潤があると判断された症例13例に門脈合併切除を行ってきたが, その意義と問題点について検討した. 肉眼的門脈浸潤度と組織学的門脈浸潤度とは一致せず, 肉眼的門脈浸潤が認められても組織学的門脈浸潤やリンパ節浸潤を認めない例が6例 (46%) に認められた. また門脈合併切除により治癒切除率が向上し, さらに生存期間の延長も認められた点より, 画像診断, 術中の肉眼診断で門脈浸潤が認められても, 積極的に門脈合併切除すべきと思われる. さらに, 膵癌治療成績の向上のためには, より有効な集学的治療法の確立が望まれる.