大腸多発癌と重複癌の臨床病理学的特徴を明らかにするため, 昭和61年までに経験した大腸癌手術例843例を検討した. 大腸単発癌758例に比べ多発癌は58例 (6.9%), 重複癌は31例 (3.7%) で, これを合わせると全大腸癌の10.6%を占めた. 多発癌は同時性, 異時性ともに70歳以上の高齢者に有意に頻度が高かった.
同時性多発癌では単発癌に比べ腺腫併存率が有意に高く, 主病巣の肉眼形態は隆起型を示す例が多かった. 多発癌, 重複癌の家族内癌陽性率は単発癌に比べて高く, 特に大腸癌の多発する家系に家族集積性の強い例が認められた. 多発癌の予後は良好であった. 重複癌では第2癌が進行癌の場合やや不良な遠隔成績であった.