抄録
術前肝機能評価や術後肝庇護対策がほぼ確立された最近5年間の消化器一般外科術後肝障害とその臨床的意義を再検討した. 1,393例のmajor手術中GPT100≦またはTotal-Bilirubin2mg/dl<の発生率は17.3% (GPT300≦は5.2%) で上部消化管手術や輸血, halothane麻酔, 外科的感染症例に多い傾向は従来の指摘通りであった.術後GPT上昇発生時期を早期 (4日以内), 晩期 (15日以降), 中間に3分すると早期型は上昇も軽く一過性でその臨床的意義は少ないと思われたが, 晩期型は高度上昇で遷延し, しかもsepsis合併例が多い傾向が注目された.また, Bilirubin上昇合併の41例をBilirubin上昇先発 (22), 同時 (12), 後発 (7), に3分するとたいていsubclinicalに経過する前者に比べ後発型は重症かつ遷延してMOFや肝不全に移行する例もみられた.このように術後肝障害の予後に影響する高Bilirubin血症合併と背景因子のsepsisに着目してエンドトキシンの胆汁うっ滞作用について実験的文献的に考察した.