日本消化器外科学会雑誌
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23 巻, 3 号
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  • 掛川 暉夫
    1990 年 23 巻 3 号 p. 685-694
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    昭和41年の胸部外科学会において恩師赤倉一郎教授が食道癌外科治療における問題点を述べられたが, 約23年後の今日における問題点と今後の動向について外科治療上特に問題となるリンパ節郭清に焦点を絞り検討した.
    昭和55年4月より平成元年5月までの約9年間に457例の食道癌を経験したが, 切除例は385例で, そのうち胸部食道癌は344例であった.これらの臨床例の成績とこれを裏付ける動物実験の結果より, 以下の食道癌リンパ節郭清の概念を得た.
    1) Safe surgical marginの確保, 2) 密度の濃い, 質の高い郭清, 3) 食道の解剖学的特性に応じた重点的合理的郭清, 4) 機能温存を考慮し, 生体のトレランスを維持する郭清, 5) 生体への侵襲が少なく, 個々の癌腫の生物学的特性を考えた効率の良い郭清
  • 戸田 守彦, 佐々木 巌, 内藤 広郎, 高橋 道長, 松野 正紀
    1990 年 23 巻 3 号 p. 695-704
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Enteroglucagon (EG) の胃酸分泌抑制作用およびEG分泌とGIP分泌との関連について実験的に検討した.遠位回腸を空腸上部に有茎移植するモデルileo-jejunal transposition (IJT) が高EG血症を来すモデルであることに着目し, イヌ16頭を用いて, IJTおよびsham operationを施行し, その術前後でHeidenhain pouch (H-P) よりの胃酸分泌および消化管ホルモンについて検討し, 以下の成績を得た.1.IJT術後は高EG血症が認められた.2.IJT術後はgastrinの著明な上昇およびH-Pよりの胃酸分泌亢進が認められた.このことはEGのenterogastrone作用を支持する結果ではなかった.3.IJT術後はGIPが60分から90分で有意の分泌抑制を認めたが, これのみでIJT後の胃酸分泌亢進を説明することは難しいと考えられた.またEG分泌とGIP分泌との間には関連が認められなかった.以上より, 本モデルにおいて生じる高EG血症の胃酸分泌に与える影響は少ないと考えられた.
  • 松井 道宣, 小島 治, 川上 定男, 上原 泰夫, 山口 俊晴, 高橋 俊雄
    1990 年 23 巻 3 号 p. 705-708
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    女性胃癌に対する内分泌環境の影響を検討するために更年期前 (20~39歳) 24例と更年期後 (60~79歳) 152例について臨床病理学的に比較し, さらに免疫組織学的染色法によりestrogen receptor (ER) の発現頻度を観察した.更年期前では更年期後に比べ, M領域 (52.6%) に多く, 肉眼型では更年期前では, 3, 4, 5型が87.4%, 更年期後では60.7%と更年期前で浸潤型の頻度が高かった.組織型は, 更年期前では未分化型が75.0%, 更年期後で45.8%であり, 更年期前で未分化型が多かった.累積生存率は両群間に有意差はなかった.ERの発現頻度は若年ほど高く女性胃癌の発育進展に女性ホルモンの関与が示唆された.
  • 特に予後規定因子の解析を中心に
    小野 聡, 玉熊 正悦, 初瀬 一夫, 西田 正之
    1990 年 23 巻 3 号 p. 709-715
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    術前肝機能評価や術後肝庇護対策がほぼ確立された最近5年間の消化器一般外科術後肝障害とその臨床的意義を再検討した. 1,393例のmajor手術中GPT100≦またはTotal-Bilirubin2mg/dl<の発生率は17.3% (GPT300≦は5.2%) で上部消化管手術や輸血, halothane麻酔, 外科的感染症例に多い傾向は従来の指摘通りであった.術後GPT上昇発生時期を早期 (4日以内), 晩期 (15日以降), 中間に3分すると早期型は上昇も軽く一過性でその臨床的意義は少ないと思われたが, 晩期型は高度上昇で遷延し, しかもsepsis合併例が多い傾向が注目された.また, Bilirubin上昇合併の41例をBilirubin上昇先発 (22), 同時 (12), 後発 (7), に3分するとたいていsubclinicalに経過する前者に比べ後発型は重症かつ遷延してMOFや肝不全に移行する例もみられた.このように術後肝障害の予後に影響する高Bilirubin血症合併と背景因子のsepsisに着目してエンドトキシンの胆汁うっ滞作用について実験的文献的に考察した.
  • 鴻巣 寛, 塚本 賢治, 弘中 武, 閑 啓太郎, 田中 善之, 久保 速三, 松田 明, 牧野 弘之, 糸井 啓純, 園山 輝久, 内藤 ...
    1990 年 23 巻 3 号 p. 716-720
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝切除を行った肝細胞癌97例を対象に, 術後早期再発に関わる病理組織学的因子を検索し, 現行の規定より一層適切と考えられる治癒切除術の条件設定を試みた.門脈侵襲または肝内転移を伴う肝細胞癌の1年3年無再発生存率は50.3%, 16.3%と予後不良であり, 肉眼型では単結節型の1年3年無再発生存率が84.3%, 53.3%と最も予後良好であった.肉眼型, 大きさと肝内転移または門脈侵襲陽性率には関連性が認められ, 単結節型が9/42 (21.4%), 単結節周囲増殖型が17/31 (54.8%), その他の型が計19/23 (82.6%) であり, 2cm以下が4/16 (25.0%), 2~5cmが20/50 (40.0%), 5cm以上が21/30 (70.0%) であった.原発性肝癌取扱い規約に従うと, 相対的治癒切除と相対的非治癒切除の両群間に無再発生存率で有意差は認めなかったが, 門脈侵襲, 肝内転移, 肉眼型を考慮して相対的治癒・非治癒切除の判定を行うと, 術後2年まで両群間に有意差を認めた.
  • 特に予後に及ぼす因子について
    松井 則親, 守田 信義, 平岡 博, 衛藤 泉, 野島 真治, 榎 忠彦, 沖野 基規, 江里 健輔
    1990 年 23 巻 3 号 p. 721-726
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵癌切除20例を対象に臨床病理学的に検索し, 予後に及ぼす因子について検討した.切除膵癌の大部分は管状腺癌で周囲組織に浸潤性に増殖し, リンパ管浸潤は90%, 膵内神経浸潤は80%, 静脈浸潤は60%にみられた.
    Stage決定因子では腫瘍の大きさが4cm以上で, 膵前方被膜への浸潤, 膵後方組織への浸潤がみられる症例の予後は特に悪かった.組織型別では予後に差はみられなかったが, 静脈浸潤, リンパ管浸潤の認められる症例の予後は悪く, 特に1年以内肝転移再発死例では全例に静脈, リンパ管浸潤が認められた.
    膵癌に対して拡大手術のみならず, 肝転移に対する予防対策が重要と考えられた.
  • 沖野 基規, 富恵 博, 松井 則親, 植木 幸一, 守田 信義, 江里 健輔
    1990 年 23 巻 3 号 p. 727-731
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃切除術を施行した226例の胃癌患者を対象として, 止血剤の投与量と癒着性腸閉塞の発生頻度との関係をretrospectiveに検討した.癒着性腸閉塞の発生頻度は, メナテトレノン非投与群3.9% (3/77) であるのに対し投与群では13.4% (20/149) と, 投与群で有意に発生頻度が上昇していた.メナテトレノンを400mg/w以上投与した大量投与群の癒着性腸閉塞発生頻度は18.8% (6/32) と, 非投与群の4倍以上の発生頻度に達していた.他の止血剤 (カルバゾクロムスルポン酸ナトリウム, トラネキサム酸, ヘモコアグラーゼ, 結合型エストロゲン) では, 投与の有無と癒着性腸閉塞の発生頻度との間に, 有意差はなかった.メナテトレノンは開腹術後の癒着性腸閉塞の発生頻度を上昇させる可能性があり, 術後に漫然と大量投与すべきではない.
  • 館 正弘, 柵瀬 信太郎, 中村 清吾, 木村 一郎, 庭野 元考, 大多和 考博, 山名 哲郎, 窪田 徹, 三枝 弘志, 長島 英子, ...
    1990 年 23 巻 3 号 p. 732-738
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸手術の術前腸管処置を103人の患者を対象として7.5%マンニトール溶液1.2Lを用いて行いその有用性を検討した.
    (結果) 1.8時間で完了し, 94%が良好な受容を示した.2.施行前後のデータの変動から1.5Lの電解質輸液が必要である.3.腸内容の排除は69%が良好であるが, ガスの発生が46%に認められた.4.術後感染症は1%のみであった.5.経口抗生物質を併用しない場合には, 大腸菌の増加が推測された.
    以上よりマンニトール溶液の経口による術前腸管処置はガスの発生という問題点はあるものの, きわめて有効かつ, 便な方法であることが確認された.
  • 山口 俊昌, 裏川 公章, 中本 光春, 田中 宏明, 磯 篤典, 川北 直人, 西尾 幸男, 植松 清
    1990 年 23 巻 3 号 p. 739-744
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1987年までの11年間の大腸癌手術277例のうちイレウス症状で発症した29例の大腸癌を臨床的病理学的に検討した. イレウス大腸癌の発生頻度は, 10.5%で, 性別は男性が女性の2.2倍, 年代では50歳台がもっとも多く13.9%であった.占居部位は下行結腸までの上部大腸が58.6%と過半数を占め, 頻度は下行結腸までの上部大腸16.5%, S状結腸以下の下部大腸6.1%であった. 病期の進行した症例が多く, 29例中切除可能は25例 (86.2%), 治癒切除は17例 (58.6%) であった. 切除25例のうち右側大腸癌13例中12例, 左側大腸癌14例中11例に1期手術が行われ, 2期手術は4例にのみ行われたのみであった. 5年生存率は29.5%, 治癒切除例は49.6%, 非治癒切除・非切除は全例2年以内に死亡した. stage別の5年生存率はstageII75%, stageIII40%, stageIV, Vは全例2年以内に死亡し, 切除可能例に対しては, 積極的な手術が必要と思われた.
  • 望月 英隆, 吉村 一克, 吉積 司, 竹内 英司, 柿原 稔, 玉熊 正悦
    1990 年 23 巻 3 号 p. 745-752
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    トキシカラーテスト (R) による血中エンドトキシン (endotoxin: Ex) 濃度50pg/ml以上を高Ex血症と定義し, その61例を対象に各種消化器外科疾患の臨床像におけるEx濃度の意義につき検討した. 高Ex血症の原因は重症感染症が67%を占めたが, 重篤な肝障害などの非感染例や癌末期例もそれぞれ15%ずつ認められた. 重症感染例で高Ex血症を伴うものは伴わないものに比べショック合併率 (54: 13%), 臓器障害合併率 (59: 26%), 死亡率 (49: 26%) が有意に高率であり (p<0.01), ショック合併例や死亡例のEx濃度はショック非合併例や救命例に比べ明らかに高濃度であった (p<0.03)-したがって重篤な感染症ではExが臨床経過に重要な影響を及ぼしており, トキシカラーによるEx濃度測定値はこれらの臨症経過や予後の判定に有意義であると考えられた. 一方真菌感染時や肝障害合併時のEx測定値にはEx以外の要因の関与が推測され, 測定値の解釈には慎重であるべきと考えられた.
  • 清水 哲朗, 加藤 博, 山下 巌, 斎藤 智裕, 竹森 繁, 中村 潔, 穂苅 市郎, 山田 明, 島崎 邦彦, 小田切 治世, 坂本 隆 ...
    1990 年 23 巻 3 号 p. 753-757
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道の小細胞型未分化癌に対し, 温熱療法を併用した集学的治療を施行し, 約9か月の生存を得られた症例を経験したので報告する.
    症例は75歳男性. 昭和62年7月より嗄声, 嚥下困難が出現, 近医にて食道癌と診断され, 11月16日当科入院となった. 入院後の諸検査により, ImEiIuにわたる切除不能食道癌で, 生検により小細胞型未分化癌と診断された. 11月30日より放射線療法計47Gy, 免疫・化学療法として, BLM計65mg, CDDP計150mg, 5FU計4,500mg, VP-16計180mg, OK432計57.2KE, PSK99gを投与し, これらに局所温熱療法9回を加えた集学的治療により, 症状はもちろん, 食道造影上も, 腫瘍陰影が消失した. しかし, 昭和63年7月になり, 多発性肝転移により再入院, 8月6日死亡した.
    放射線・温熱併用療法の局所に対する効果は期待されるが, より有効な化学療法の検討が必要であると考えられた.
  • 酒井 憲見, 朔 元則, 内藤 英明, 神代 龍之介, 犬塚 貞光
    1990 年 23 巻 3 号 p. 758-761
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵炎が誘因と思われる慢性胃蜂窩織炎の2例を経験した.
    症例は65歳, 男性および70歳, 男性で術前スキルス胃癌が疑われた. 術中所見でも胃壁は著明に肥厚し, 膵体部と強く癒着し, 胃全摘を施行した. しかし切除標本の病理組織診断は慢性胃蜂窩織炎であった.
    胃蜂窩織炎はきわめてまれな疾患であり, 術前に診断されることはまれである. 特にスキルス胃癌との鑑別診断は非常に困難であり, 本疾患の存在を熟知しておくことが必要である.
  • 村上 義昭, 今村 祐司, 瀬分 均, 藤本 三喜夫, 竹末 芳生, 児玉 節, 横山 隆
    1990 年 23 巻 3 号 p. 762-766
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腹部超音波検査にて偶然に腫瘤を発見され, 手術の結果, 胆嚢の異所性胃粘膜 (以下, 本疾患と略す.) と判明した1例を経験したので報告した. 患者は, 44歳, 男性で, 特に症状は認めなかったが, 腹部超音波検査にて, 胆嚢体部に直径10.4mm大のhigh echo areaの山田II型の胆嚢ポリープを, 内視鏡的逆行性胆管造影にても胆嚢の隆起性病変を認めたため, 悪性疾患を考慮して手術を施行した. 手術は, 術中の迅速病理診にて悪性所見を認めなかったので胆嚢摘出術のみを施行したが, 術後の病理学的診断にてポリープは胆嚢粘膜層に存在, 胃底腺組織よりなる, 本邦における7例目の胆嚢の異所性胃粘膜であった. 本疾患はまれな疾患でありその術前診断は容易ではないが, 画像診断の進歩により今後もその報告が増加することが予想される.
  • 鈴木 修一郎, 津沢 豊一, 霜田 光義, 白崎 功, 山本 克弥, 中鳴 良作, 佐伯 俊雄, 小田切 治世, 田沢 賢次, 藤巻 雅夫
    1990 年 23 巻 3 号 p. 767-771
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌に他臓器癌を合併することは決してまれではない. しかし, その中では際癌との合併は比較的まれであり, さらに両者とも切除しえるのはさらに少ない. 今回, 膵癌胃癌ともに治癒切除をしえた胃膵同時重複癌の1例を経験したので報告する.
    症例は56歳, 男性で定期検診をきっかけに胃膵同時重複癌と診断され手術を行った. 手術は胃全摘, 膵陣合併切除をすることにより治癒切除を施行しえ, かつ, 解癌切除後の後方剣離面を中心として術中照射を40Gyかけた. しかし, 術後4か月日に腹膜再発を, 9か月日に癌性腹膜炎にて死亡した.
    胃膵同時重複癌で治癒手術を行いえた報告例は自験例を含め9例である. その内, 術前胃膵重複癌と診断したのは4例のみであった. 日常診療や手術に際し常に他臓器癌を念頭におき, 十分な精査治療を行うように心がけるべきである.
  • 神野 正博, 出口 康, 表 和彦, 秋本 龍一
    1990 年 23 巻 3 号 p. 772-776
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆裏に悪性腫瘍が転移することはきわめてまれな病態とされ, 本邦においては3例の異時性転移性胆裏腫瘍が報告されているにすぎない. 症例は44歳男性で, 心寓部不快感, 腹部膨減感を主訴に来院した. 諸検査にて胃体部小弯前壁を中心とするボールマンIII型胃癌と小網内リンパ節転移, 胆嚢内ポリープ様病変をみとめた. また, 血液検査所見にて軽度貧血とCEA値の高値をみた. 以上より進行胃癌および胆裏ポリープの診断で開腹したところ, H0P2S2N4 (+), Stage IV胃癌と胆嚢粘膜下腫瘍様病変をみとめた. 病理組織学的に胃癌ヤま低分化腺癌で, se, ly2, VOであり, 胆嚢腫瘍は胆嚢壁内の間質問に腺癌細胞の浸潤をみた. ともにPAP法によるCEA染色は陽性であった. 本例はN4 (+), P2進行胃癌における多彩なリンパ管閉塞とそれに伴うリンパ行路の異常の存在により胆襲壁の間質問に転移を認めたものと推察された.
  • 馬庭 宣隆, 丸林 誠二, 八幡 浩, 福田 康彦, 浅原 利正, 土肥 雪彦
    1990 年 23 巻 3 号 p. 777-781
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    非常にまれな巨大な門脈一大静脈シャントにより, 猪瀬型肝性脳症を呈した症471に, シャント切除術を行い良好な結果を得た. 患者は55歳の男性で肝硬変と陣腫を伴い総ビリルビン2.6mg/dl, ICGR1544.5%白血球1,800, 血小板6.2X104でぁった, シャントは上腸間膜静脈より右腎静脈下の下大静脈に流入し, 血管径は3.4cmで右後腹膜腔全体に屈曲蛇行する巨大なものであった. 手術は陣摘出術とシャント血管切除を行った. 術中門脈圧に変化を認めず門脈血流は向肝性となった. 術後, 自血球, 血小板は著明に増加し, アンモニア, ICG, 胆汁酸, エンドトキシン等の諸検査成績も改善した. また, 門脈血栓症を併発したが抗凝固療法によリコントロールできた. 胃周囲血行郭清術はしなかったが, 食道静脈瘤の進展はみていない. 今後, 門脈大静脈シヤント症例には, 肝不全, 食道静脈瘤, 門脈血栓症の発症に注意して積極的に切除すべきである.
  • 永野 浩昭, 門田 守人, 梅下 浩司, 後藤 満一, 左近 賢人, 金井 俊雄, 飯島 正平, 大間知 祥孝, 森 武貞, 岡村 純
    1990 年 23 巻 3 号 p. 782-786
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    55歳男性, 右葉の多発肝細胞癌に対しリピオドール化学塞栓術を行った後, 1986年1月当科に入院した. 腹腔鏡下肝生検にて, 非癌部は慢性非活動性肝炎であった. Computed tomography (CT) より算出した右葉の全肝に占める割合は695%で, 残存肝Rmaxその他の検査より右葉切除は耐術不能と考えられたため, 肝左葉の肥大を目的としてまず門脈右枝結熱術を行った. 結繁後6週間で著明な右葉の萎縮と左葉の肥大を見た. 一般肝機能検査の悪化なく, 右葉切除の切除率が515%と減少し残存肝Rmaxなどの指標が改善, 耐術可能と判断し, 門脈結紫後47日目に右葉切除を施行した. 術後, 肝不全などなく, 68日目に退院した. 3年1か月後の現在, 残肝と右副腎に再発を認めるが生存中である. 本法は, 経門脈的な腫瘍の進展を防ぎつつ非結繁葉の肥大をえることができ, 耐術境界症例に対する安全かつ有効な方法であると考えられた.
  • 木村 充志, 高安 賢一, 山田 達哉, 幕内 雅敏, 山崎 晋, 長谷川 博
    1990 年 23 巻 3 号 p. 787-790
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    近年の腹部超音波検査, computed tomography, 経皮経肝門脈造影など診断技術, 機器の発達により肝内の脈管構築の把握がより容易になってきている. 今回われわれは画像診断で異常な肝内門脈走行を示したl Trlを経験した. 症例は肝腫場にて精査中門脈右前枝の裏状の拡張, 門脈左枝踏部の欠損, 肝円索の位置異常を認めた. このような肝内門脈の異常走行例はごくわずかで (0.1%) その原因は胎児期の発生異常と考えられた. 画像診断による肝内の脈管構築の把握は肝切除術特に脈管処理に際して重要である.
  • 北川 喜己, 秋田 昌利, 長谷川 洋, 太田 章比古, 吉田 英人, 川辺 博, 梛野 正人
    1990 年 23 巻 3 号 p. 791-795
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆嚢十二指腸瘻・胆嚢結腸瘻を合併した胆嚢癌の1切除例を経験したので報告する.
    症例は68歳の女性で右季肋部痛および発熱を主訴に来院した.腹部超音波検査および腹部CT検査にて右季肋部に7×8cm大の腫瘤を認め, 低緊張性十二指腸造影検査にて十二指腸と胆嚢および胆嚢と結腸の間の瘻孔が認められた.
    手術は肝S4a+S5+S6切除, 右半結腸切除を伴う膵頭十二指腸切除術が施行され, 切除標本にて胆嚢十二指腸瘻および胆嚢結腸瘻が確認された.組織学的にはadenosquamous cell carcinomaと診断された.
    Stage IV胆嚢癌の予後は不良であるが, 本例はリンパ節転移 (-) で比較的予後が期待でき, 今後も同様な症例には積極的な手術を行うべきであると思われた.
  • 菅野 千治, 須藤 隆之, 佐々木 亮孝, 玉沢 佳之, 豊島 秀浩, 大森 英俊, 阿部 正, 斎藤 和好, 鈴木 克, 八島 良幸, 日 ...
    1990 年 23 巻 3 号 p. 796-800
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵のsolid and cystic tumor (SCT) の2例を経験したので報告する.いずれも12歳の若年女子に発生したもので, 症例1は腹部腫瘤を主訴とし, 症例2は黄疸と全身掻痒感を訴えて来院し, 腹部腫瘤を指摘されたものである.腫瘍は大きく, 症例1は8.1×8.0cm, 75gで膵尾部に存在し, 膵体尾部切除術を, 症例2は7.5×6.5cm, 180gで, 膵頭部に存在し, 膵頭十二指腸切除術を行った.腫瘍は線維性の被膜で覆われ, 割面では嚢胞変性, 出血壊死性変化がみられた.組織学的には腫瘍細胞の充実性, 偽乳頭状配列をみ, 症例1にはPAP法によるα1-antitrypsin染色を行い, 陽性反応を示した.現在, 術後6年と7年を経過しているが再発の徴候もなく元気に学校生活を送っている.
  • 出射 秀樹, 裏川 公章, 中本 光春, 山口 俊昌, 安積 靖友, 田中 宏明, 磯 篤典, 西尾 幸男, 五百蔵 昭夫, 植松 清, 瀬 ...
    1990 年 23 巻 3 号 p. 801-805
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膠原病に合併した腹部血管炎による腸管の壊死・穿孔の3例を経験したので報告する.症例1は52歳男性, 症例2は69歳女性, 症例3は46歳女性で原疾患はそれぞれperiarteritis nodosa, rheumatoid arthritis, systemic lupus erythematosusであった.全例激烈な腹痛で発症し, 壊死・穿孔部位は回腸を中心とし, 手術は病巣切除と吻合を行い, 症例1には横行結腸外瘻術も併施した.予後は症例1は縫合不全と壊死・穿孔の再発のため術後12日目に, 症例2は多臓器障害により術後2日目に死亡したが, 症例3は7か月後の現在も生存中である.膠原病に合併した腹部血管炎による消化管の壊死・穿孔は全身の血管炎の部分症状として出現したものであるため, 手術に際し腸管の切除範囲の決定が問題であり, 加えて術後intravenous hyperalimentation, steroid抗生物質などによる全身管理が必要である.
  • 西村 理, 松末 智, 小泉 俊三, 柏原 貞夫
    1990 年 23 巻 3 号 p. 806-809
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腸管膜動脈の循環障害に起因する小腸狭窄の1例を経験した.
    症例は61歳男, 腹部大動脈再建術後に下痢, 腹痛, 嘔吐を呈し, 腹腔内膿瘍と診断されて当科に入院した.排膿術を施行するも症状の改善を得ず, 腸閉塞症状が出現した.高カロリー輸液下に諸検査を行い, 血管造影で上腸管膜動脈根部の狭窄を認めた.虚血が関与する腸閉塞の診断で開腹すると, 回腸の一部が索状に狭窄し, これに沿う腸管膜は萎縮していた.狭窄部を切除し, 端々吻合して症状の消失をみた.病変部は肉眼的に瘢痕状で, 組織学的には腸管全層にわたる線維化と腸管膜動脈の閉塞性変化を認めた.
    本症は予後不良と言われるが, その改善のためには診断から治療にわたる栄養管理をはじめ, 適切な全身管理が肝要である.
  • 船戸 崇史, 市橋 正嘉, 乾 博史, 多羅尾 信, 後藤 明彦
    1990 年 23 巻 3 号 p. 810-814
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニア (以下, 本症) は比較的まれで, 死亡率の高い疾患である.しかし近時, 本症の概念の浸透に伴い, 術前診断率は向上し, 今後, 本症の非観血的整復術 (以下, 本整復術) の正否が問われるようになると考えられる.今回われわれは, 本整復術の1例を経験したので, 報告するとともにその適応についても若干の文献的考察を加えた.
    患者は84歳, 女性.突然の腹痛と右大腿部痛を訴え救急外来を受診した.閉鎖孔ヘルニアを疑い, 腔診と骨盤部computed tomographyを行ったところ, 右閉鎖孔部に一致して腫瘤像を認めた.本症と確定診断し経腟的に整復術を試みたところ, 症状は劇的に改善し, 閉鎖孔を触れるようになった.その後, 待期的に開腹術を施行したところ, 小腸には循環障害を認めず, また閉鎖孔以外に責任病変は認められないため, 腸管切除することなく閉鎖孔を閉じ手術を終了した.
  • 矢田 克嗣, 林 宏輔, 安芸 敏彦, 高橋 純一, 河村 哲雄, 小川 博康, 長嶺 慎一, 東 一也, 竹内 正
    1990 年 23 巻 3 号 p. 815-819
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    子宮体癌と卵巣癌の根治術7年後に発生した同時性大腸4多発癌の1例を経験した.
    症例は27歳, 主婦.主訴は下血で, 既往歴は20歳時, 左卵巣癌, 子宮体癌にて両側卵巣摘出術, 子宮全摘術ならびにリンパ節郭清術をうけている.注腸検査の結果, 上行結腸およびS状結腸癌ならびに直腸ポリープの診断のもと, 右半結腸切除術, S状結腸切除術を行い, 直腸ポリープも悪性が強く疑われたため直腸切断術も合わせ施行した.病理組織像は, 上行結腸癌は高分化腺癌, S状結腸癌は粘液癌, 直腸ポリープは中分化腺癌であった.術後経過は良好で13か月たった現在, 再発の徴候は認めていない.本症例は, 子宮体癌, 卵巣癌の発症が20歳と若年であったこと, 術後7年たって同時性大腸4多発癌が発生した若年者重複癌であるが, 遺伝的背景はあきらかではないもののcancer family syndromeと共通する点が多く興味ある症例と思われた.
  • 大辻 英吾, 高橋 俊雄, 山口 俊晴
    1990 年 23 巻 3 号 p. 820
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
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