日本消化器外科学会雑誌
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胆裏転移をみとめた胃癌の1症例
神野 正博出口 康表 和彦秋本 龍一
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1990 年 23 巻 3 号 p. 772-776

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抄録
胆裏に悪性腫瘍が転移することはきわめてまれな病態とされ, 本邦においては3例の異時性転移性胆裏腫瘍が報告されているにすぎない. 症例は44歳男性で, 心寓部不快感, 腹部膨減感を主訴に来院した. 諸検査にて胃体部小弯前壁を中心とするボールマンIII型胃癌と小網内リンパ節転移, 胆嚢内ポリープ様病変をみとめた. また, 血液検査所見にて軽度貧血とCEA値の高値をみた. 以上より進行胃癌および胆裏ポリープの診断で開腹したところ, H0P2S2N4 (+), Stage IV胃癌と胆嚢粘膜下腫瘍様病変をみとめた. 病理組織学的に胃癌ヤま低分化腺癌で, se, ly2, VOであり, 胆嚢腫瘍は胆嚢壁内の間質問に腺癌細胞の浸潤をみた. ともにPAP法によるCEA染色は陽性であった. 本例はN4 (+), P2進行胃癌における多彩なリンパ管閉塞とそれに伴うリンパ行路の異常の存在により胆襲壁の間質問に転移を認めたものと推察された.
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