抄録
肝細胞癌24症例に対して, N-cws/Lipiodol動注免疫療法を試み, その安全性と治療効果を検討した.
1) 発熱を主とし, 嘔吐, 一過性の血圧低下などあるも, 動脈阻血が無いため胃, 十二指腸潰瘍, 胆嚢炎などの合併症はなく, 特に肝障害を全く残さなかった.
2) AFPの低下, 画像上での腫瘍陰影の縮小をもたらし, また投与局所に, リンパ球浸潤, 肉芽腫形成などの反応を惹起し, 同時に主腫瘍や門脈腫瘍栓の壊死をきたすなど宿主介在性と考えられる効果を認めた.
3) 末梢血中のリンパ球サブセットは, 動注加療によりTs低下, Th/Ts比の上昇など, 免疫賦活の側へ変動した.
以上の結果より本治療方法は安全であり, 投与した局所に十分な効果が期待できるとともに, その作用機序には, 抗腫瘍性に働く免疫の賦活の関与が示唆された.