抄録
肝癌切除後の免疫能の推移について検討した.対象は肝癌切除症例25例とし, 肝硬変または活動性肝炎合併例 (A群, n=15), 非合併例 (B群, n=10) に分け, 術後4週目まで各種パラメーターを観察した.リンパ球数は3日目に, helper T/suppressor T比は7日目に最も低下した.Natural killer活性, lymphokine-activated killer活性はともに2週目に有意に低下し (p<0.05), 4週目には回復したが, A群ではその低下が顕著で回復も遷延した.Antibody dependent cell-mediated cytotoxicity活性は著変を認めなかった.IgG, IgA, IgMは3日目に減少し, 1週目に回復したが, A群が術前, 術後を通じ有意に高値であった (p<0.05).C3, C4はともに1週目で有意に高値となり (p<0.05), 2週目に回復した.以上より, 肝癌切除症例では術後2週目まで免疫能が低下し, 併存肝病変を有する場合, その低下が顕著で, 回復が遷延するものと考えられた.