抄録
最近5年間に当科で経験した胆嚢隆起性病変21例 (腺癌6例, 腺腫3例, コレステロールポリープ5例, 過形成性ポリープ4例, 炎症性ポリープ2例, 異所性胃粘膜1例) の臨床病理学的検討を施行した.術前診断では, 超音波検査にて腺癌と他疾患の鑑別は困難で, コレステロールポリープのみ質的診断が可能であった.腺癌症例は, 高齢者の最大径10mm以上の隆起性病変に多く, 有茎性の腺腫内腺癌と広基性の進行癌に大別され, 後者はその最大径がより小さい時期に進行癌となる傾向を認めた.なお, 腺癌症例は, 全例, 無再発生存中で, DNA ploidy patternがdiploidであり, 予後良好な一因と考えられた.以上より, 胆嚢隆起性病変においては, 有茎性の症例は最大径10mm以上を, 広基性の症例は最大径5mm以上を手術適応とし, 手術術式としては, 全層胆嚢摘出術の後, 主病変, リンパ節の術中迅速病理診断の結果により, リンパ節郭清, 胆管切除, 肝切除を施行するのが妥当と考える.