症例は41歳男性, 主訴は右上腹部痛で, 胆石症および腹腔内腫瘍の診断にて開腹を行った.
開腹所見にて大網にやわらかくもろい粘液腫状で易出血性の18×17cmの腫瘍性病変を認め, 肝左葉外側区域前下面および胃体部前壁に播種性転移を認めた.手術は腫瘍を十分含め大網部分切除, 肝左葉外側区域部分切除, 胃部分切除および胆嚢摘出術を行った.術後病理組織にて平滑筋肉腫と診断された.現在術後9か月で再発の徴候なく生存中である.
大網原発の腫瘍は非常にまれであり, 大網原発の平滑肉腫は検索しえたかぎりでは本例で本邦26例目であった.本腫瘍のほとんどが10cm以上の腫瘤として認められることが多く, 予後不良とされてきたが, 近年外科的に切除ができたとの報告がみられるようになり, 転移巣を含めて充分な外科的切除を行えば予後は期待できると考えられた.