日本消化器外科学会雑誌
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24 巻, 8 号
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  • 工藤 明敏, 堀 雅晴, 太田 恵一朗, 中島 聰總, 西 満正
    1991 年24 巻8 号 p. 2099-2104
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌の術前にリンパ節転移の有無を知ることは, 手術法の選択・リンパ節郭清の範囲決定に重要な役割を占める.1988年2月より1989年6月まで, 癌研外科において手術を施行した進行胃癌59例を対象として, CT所見と組織学的リンパ節転移の有無をretrospectiveに検討した.CTは東芝900s, 検査法は造影剤自動注入法 (0.5ml/sec, 100~120ml) のみであり, スライス幅は1cm, スライス間隔は1cmで全例に胃部を拡大撮影している.胃癌リンパ節のCT診断において, 1) 局在診断は, ある程度可能である.2) リンパ節描出率は,(3) (小弯リンパ節) が高い (52%).リンパ節全体では描出率は30%にすぎない.3) 転移リンパ節の特徴として次の (1) (2) があげられる.(1) 丸型・平板状リンパ節では径が15mm以上,(2) (a) 虫くい,(b) packet formation,(c) 辺縁high density中心low density,(d) relatively high density,(e) まだら状リンパ節, 4) リンパ節群,(3) (小弯リンパ節),(16) (大動脈周囲リンパ節) に関して診断能が高い.
  • B-II法残胃の癌発生リスクについて
    近藤 建, 山内 晶司, 佐々木 隆一郎, 秋山 清次, 伊藤 勝基, 渡辺 正, 横山 泰久, 高木 弘
    1991 年24 巻8 号 p. 2105-2112
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    残胃癌発生リスクを評価する上で, 初回手術後長期経過例の検討が必要である.1960~1964年の良性疾患に対するすべての胃部分切除2,613症例に対するアンケート調査を行い, 20年以上の経過を確認したBillroth-I (以下B-I) 法756例, Billroth-II (以下B-II) 法299例を対象として残胃癌発生率を検討した.残胃癌の発生はすべて男性でB-I法に2例, B-II法に4例みられた.人年法によると, 初回手術時40歳未満のB-II法例では人口1,000人対0.539と最も発生頻度が高く, B-I法0.134の4倍であった.他方, 26例28病変の切除残胃癌症例の検討では, B-II法例で吻合部癌の頻度が13/18 (72.2%) とB-I法例の3/10 (30%) に比べて有意に高く, 特に経過20年以上ではgastritis cystica polyposa内に認められる吻合部癌の存在が特徴的であった.術後20年以上経過したB-II法はB-I法に比べて残胃癌発生リスクが高く, 特に吻合部には逆流十二指腸液を含む癌発生要因が働いていることが示唆された.
  • 金平 永二, 中川 正昭, 川浦 幸光, 大村 健二, 疋島 寛, 中野 一郎
    1991 年24 巻8 号 p. 2113-2118
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    単発早期胃癌258例 (m癌149例, sm癌109例) を対象として, 統計学的手法により深達度診断を試みた.数量化可能な客観的パラメーター7項目をもちいて判別分析を行った結果, m癌とsm癌の2群を最もよく分離する下記の判別関数を得た.
    Z (x) =-3.44×10-1x1-8.08×10-1x2+2.08x3-6.79×10-1x4+6.49×10-1x5+5.62×10-1x6-2.15
    ただしx1に長径, x2に肉眼型, x3に占拠部位1, x4に組織型, x5に占拠部位2, x6に性別を代入する.正診率はm癌で73.8%, sm癌で64.2%であった.リンパ節転移率は, 真のm癌では0.7%, 真のsm癌109例では20.2%であった.これに対し判別関数上のm癌では1.3%, sm癌では19.3%であった.今回得られた早期胃癌の深達度診断法は従来のX線, 内視鏡検査所見を指標とする深達度診断に比べて遜色のない正診率であり, リンパ節転移の予測も含め, 臨床上有用と考える.
  • 金光 敬祐, 沢井 清司, 岡野 晋治, 清木 孝祐, 谷口 弘毅, 山口 俊晴, 高橋 俊雄
    1991 年24 巻8 号 p. 2119-2125
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1983年から1988年までの間に教室で切除を行った胃癌422例を周手術期 (術前・術中・術後) に輸血を行わなかった非輪血群 (226例), 1,000ml未満の輸血を行った1,000ml未満群 (105例), および1,000ml以上の輸血を行った1,000ml以上群 (91例) の3群に分け, 周手術期の輸血が胃癌の生存率におよぼす影響について検討した.5年累積生存率は80.5%, 46.4%, 32.6%の順となり, 各群の間に有意差を認め, 輸血量の多い症例ほど生存率は不良であった.しかし, 輸血量が多かった症例では, 高齢者, 病期の進んだ症例, 肉眼型が浸潤型, 深達度の深い症例, リンパ節転移陽性例および胃全摘を行った症例がより多かったので, 組織学的病期別に生存率を比較した.その結果, stage IIおよびIVでは, 非輸血群の生存率が輸血1,000ml未満群および輸血1,000ml以上群と比べて有意に良好であったことからこれらのstageでは周手術期の輸血が予後を不良にしている可能性があるものと考えられた.
  • 河崎 秀樹, 和田 大助, 古味 信彦
    1991 年24 巻8 号 p. 2126-2135
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    選択的近位迷走神経切離術(SPV)後の高ガストリン血症に及ぼす胃内胆汁の影響を実験的に検討した.術後12週では胆汁を胃内に流入させた群(胆汁群)は試験食投与後の末梢血漿ガストリン値(IRG),ソマトスタチン値(SRIF)が対照群に比較し低値で,integrated IRG,SRIF responseは胆汁群(8.98±2.27,7.14±1,62ng・120min/ml)が対照群(15.26±2.97,11.87±2.71ng・120min/ml)に比較し有意に低かった.免疫組織化学法で染色した幽門洞粘膜内G,D細胞数(30.5±3.9個/mm,22.2±1.9個/mm)は対照群(47.4±6.6個/mm,26.9±2.1個/mm)に比較し有意に少数であった.以上からSPV後に胃内に流入した胆汁はG細胞数を減らし,血中ガストリン値を低下させることが示唆された.また胆汁群の幽門洞粘膜には点状出血,発赤や表層性胃炎がみられ,胃内流入胆汁がSPV後の胃潰瘍発生の一因である可能性が示唆された.
  • 亥埜 恵一, 山岡 義生, 高安 隆
    1991 年24 巻8 号 p. 2136-2142
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1985年1月から1990年4月までに当教室で経験した肝切除例は521例である.うち肝細胞癌は308例で, 3か月以上経過し外来を中心に確実な追跡調査が行われている271例について, 70歳以上と未満に分け検討した.70歳以上は37例, 13.7%であり, 術前の肝の病態 (機能検査および肝硬変合併の有無など), 腫瘍の大きさ, 肝切除範囲, 術後合併症の発現頻度, 30日以内の手術死は非高齢者のそれぞれとは有意差は認められなかった.また, 累積生存率では4年72%で非高齢者群の4年35%に比べ有意に良好な成績を得た (p<0.05).
    われわれは肝細胞癌に対してredox理論に基づいた十分な術前, 術中, 術後管理により拡大手術を行っている.高齢者に対する肝切除は, 従来考えられている程には危険はなく, 高齢者といえども積極的に拡大手術を行うべきと考えられた.
  • 渡辺 一男, 浅野 武秀, 竜 崇正, 坂本 薫, 吉田 雅博, 藤田 昌宏, 本田 一郎, 渡辺 敏, 川上 義弘
    1991 年24 巻8 号 p. 2143-2148
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の術後には, 残した癌と多中心性の再発が考えられる.術前のN-cws/Lipiodol動注による免疫療法が, これら再発に与える影響を検討した.
    対象は肝細胞癌治癒切除例とし, 紹介時未処置例のうち11例を治療群, その他の22例を対照群とした.治療群はN-cws/Lipiodolを術前に肝動注し, 切除後はN-cwsを皮内投与.対照群は切除後必要に応じて種々の治療法を適宜施行.
    治療群生存は8例, 7例が無再発, 最長5年2か月を経過, 再発はすべて1年以内.対照群生存は12例, 9例が無再発, 最長3年2か月を経過.対照群の再発は13例であり9例が1年以内4例が2年以後再発.検定により治療群は術後2年以後の再発に抑制がみられ, 4年以後, 生存率が有意の改善を示した.
    機序として本治療法による腫瘍免疫賦活が再度の発癌を抑制する可能性が示唆された.
  • 菅沢 寛健, 宮崎 勝, 奥井 勝二
    1991 年24 巻8 号 p. 2149-2154
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    ラットCCl4慢性肝障害モデルを作製し, アミノピリン呼気テスト (ABT) による肝マイクロゾーム機能量を40%肝部分切除前後に測定し, 肝蛋白合成能との関係も検討した.正常肝 (n=5) に比べCCl4障害肝群 (n=14) では術前ABTは軽度低下をみるが有意差はない.40%肝切除後の低下はCCl4障害肝群で著明であり (p<0.05) その回復も遅延した.肝切除後生存群の術前ABTは68±29%, 死亡群は16.9±2.7%と有意の低下を示した (p<0.05).肝蛋白合成能は正常肝群404±90dpm/mg proteinに比べCCl4障害肝群では1,470±405dpm/mg proteinと有意に高値を示しABT値とは負の相関を認めた (r=0.881, p<0.001).肝組織内蛋白含量はCCl4障害肝群で低下したが有意差はなかった.ABTでみる肝マイクロゾーム機能量はCCl4障害肝ラットでの肝切除時の予備力評価に有用である.またCCl2障害肝での肝蛋白合成能の亢進はABTでみる肝予備力低下に連なるものと考えられた.
  • 神山 泰彦, 佐々木 巌, 松尾 哲也, 松田 好郎, 内藤 広郎, 松野 正紀
    1991 年24 巻8 号 p. 2155-2162
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸 (以下, 黄疸) 時の急性潰瘍発生におよぼす黄疸持続期間の影響について減黄操作の効果を含めて検討した.黄疸2, 4, 6週および黄疸2, 4週兼減黄ラットを作成し水浸拘束の前後で潰瘍係数, 胃粘膜potential difference (以下, PD), 胃内pHを測定した.その結果, 黄疸が持続するほど潰瘍係数が高く, 黄疸2週では減黄操作により潰瘍係数の減少を認めたが, 黄疸4週では減黄操作のみで潰瘍発生を認め水浸拘束時の潰瘍係数の減少も認められなかった.胃粘膜PDは黄疸2週では減黄操作により水浸拘束時の低下が抑制されたが, 黄疸4週では効果が明かではなかった.胃内pHに対する黄疸持続期間および減黄操作の影響は明かではなかった.以上より黄疸持続期間が長いほど潰瘍発生が多く胃粘膜防御因子の低下もより著明となり, また, 黄疸が長期間持続すると減黄操作を行っても潰蕩発生は抑制されにくくなり, 減黄操作のみで潰瘍が誘発されることが示された.
  • 中島 公博, 加藤 紘之, 奥芝 俊一, 児嶋 哲文, 下沢 英二, 田辺 達三
    1991 年24 巻8 号 p. 2163-2168
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    当科では従来より門脈圧亢進症に対し, 改良型選択的遠位脾腎静脈吻合術 (distal splenorenal shuntwith splenopancreatic disconnection; DSRS with SPD) を行ってきたが, さらにsplenopancreaticgastric disconnection (SPGD) へと改良を加えた.今回, 術後遠隔期に血管造影を施行し, 評価可能であった初期のSPGD不完全例6例とその後の完全施行例18例を対象にSPGDの意義を検索した.その結果, SPGDの不完全例ではportal perfusion grade (PPG) は維持されているものの, 完全例と比較すると術前後のPV/SMVの変化率は有意な低下を示し, 傍胃静脈などの側副血行路が描出されていた.これに対し, 現在恒常的に行っている完全例では門脈肝血流量の維持の上で満足すべき遠隔期所見が得られた.以上より, DSRSにSPGDを付加することは術後門脈血流の確保, シャント選択性の保持に不可欠であるものと考えられた.
  • 石川 啓, 中越 享, 清水 輝久, 平野 達雄, 草野 裕幸, 梶原 啓司, 山口 広之, 中崎 隆行, 川副 直樹, 林 宗栄, 三浦 ...
    1991 年24 巻8 号 p. 2169-2175
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    34例の同時性大腸多発癌について臨床病理学的検討を行い, さらにnow cytometerを用いて核DNA量を測定し以下の結果を得た.
    多発癌の占居部位では34例中15例 (44%) で同一領域内に発生しており, 特にS状結腸に多発していた.多発癌の第2癌は第1癌に比べ肉眼型で0型, 壁深達度で粘膜癌, 粘膜下層癌, 組織型で高分化腺癌が多かった.予後は単発癌の5年生存率が68%に対し, 多発癌では75%であった.核DNA量を測定した14症例37病変中, DNA diploidyは27例, DNA aneuploidyは10例であったが, DNA ploidypatternと肉眼型, 組織型, 壁深達度の間には有意差を認めなかった.各症例におけるDNA ploidypattemの組合せは, DNA diploidyどうしが7例, DNA diploidyとDNA aneuploidyが4例, DNAaneuploidyどうしが3例であり, DNA aneuploidyどうしの組み合せでは, そのDI値は異なっており, 同時性大腸多発癌の各病変が独立した起源であることが示唆された.
  • 辻田 和紀, 船橋 公彦, 渡邊 正志, 中村 博志, 渡邊 聖, 戸倉 夏木, 永澤 康滋, 大谷 忠久, 小林 一雄, 柳田 謙蔵, 蔵 ...
    1991 年24 巻8 号 p. 2176-2182
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌201例の核DNA量をflow cytometryで測定, 臨床病理学的所見および予後との関連について調べ, 予後因子としての意義について検討した.
    Aneuploid例はリンパ節転移, 脈管侵襲, 肝転移陽性例に, また進行度が進んだ症例に多く認められた.Aneuploid例はdiploidにくらべ対象例全例, Dukes B症例で有意に予後不良であった.Aneuploid例をさらにDNA Index (DI) が1.4以下と1.41以上とで分類すると (以下index), DIの大きい症例のほうが予後不良であった.数量化理論第II類による判別分析の結果ではDNA量よりもDukes分類, 壁深達度, 肝転移の有無などのほうが予後への関与は強く, indexはploidyより予後とのかかわりが強いと考えられた.
    核DNA量より大腸癌の悪性度や予後について検討するさい, DNA ploidyだけでなくaneuploid例をDI値によりさらに分類して検討する必要があると思われた.
  • 西田 禎宏, 中本 光春, 裏川 公章
    1991 年24 巻8 号 p. 2183-2189
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1985年1月より1989年12月までの5年間に当科で切除した大腸癌120例のうち, 高齢者の特徴を最も顕著に示すと思われる80歳以上の21例 (17.5%) を高齢者大腸癌として79歳以下の対照群99例と比較検討した.
    高齢者大腸癌は術前に治療を要する肺疾患や, 循環器系, 呼吸器系, 総蛋白量の異常を示す率が高率であった (p<0.05).占拠部位は高齢化に伴い右側結腸の占める割合が高くなる傾向にあった.壁深達度はss-alが61.9%と最も多く, 脈管侵襲ではV0が29.4%と低率 (p<0.05) で, n2以上のリンパ節転移率は23.5%と高齢者で高い傾向をみた.stage IV以上が42.1%と進行度の高い症例が対照群より多い傾向にあった.治癒切除率は対照群と遜色なかったが, 術後の合併症発生率は42.9%, 手術直接死亡率は4.8%と対照群に比し高い傾向があった.高齢者では術後に合併症を生じると重篤となりやすく, 緻密な術前・後の管理が必要である.
  • 椿 昌裕, 竹村 克二, 安藤 昌之, 多田 雅典, 山下 博典, 和田 靖, 村瀬 尚哉, 遠藤 光夫
    1991 年24 巻8 号 p. 2190-2195
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    昭和49年から62年までに切除された大腸癌258例を対象に, 1987年に改定された新TNM分類と現行の大腸癌取扱い規約の2つの分類に沿ってretrospectiveに病期分類を行い.2つの分類法の特徴について検討した.
    その結果, 新TNM分類による生存率曲線は比較的バランスのよい形を保って下降していた.亜分類された各深達度の5生率には余り差がなく, pN1, pN2, 3の間の5生率には統計学的有道差が得られた.規約分類による生存率曲線ではstage III, IVの曲線が近接していた.またsinomoの5生率は85.7%と良好でn1とn2の5生率は52.3%, 64.1%と逆転していた.
    Dukes分類に準じた新TNM分類は大腸癌の予後を良く反映していたが, リンパ節の転移度は病期に反映させるべきであろうと思われた.規約分類のstage III, IVの分類法には臨床的限界があり, 特にリンパ節の分類法は再検討されるべきであった.
  • 牧野 治文, 添田 耕司, 奥山 和明, 神津 照雄, 小野田 昌一, 磯野 可一
    1991 年24 巻8 号 p. 2196-2200
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大量吐血にてショックとなり緊急手術を施行した食道潰瘍の1例を本邦報告391例の食道潰瘍の考察とともに報告する.症例は, 41歳男性で家庭薬販売業であり服薬の習癖があった.初回吐血では近医にて胃切開したが出血点が不明で, 2回目の吐血では内視鏡検査で中部食道と下部食道に各1この潰瘍を認め, 出血性下部食道潰瘍にはエタノールを注入し止血した.3回目の吐血で当科に紹介され, 内視鏡検査で中部食道潰瘍に露出血管を認めたが出血はなく, 下部食道潰瘍は治癒傾向を示していた.2日後4回目の吐血にてショックとなり, 内視鏡検査にて中部食道潰瘍から動脈性の出血を認めたが止血できず, 緊急手術にて右開胸し中部食道潰瘍の上下を結紮後, 血圧が上昇しショックを離脱し, 食道切除術を施行した.術後64病日に合併症もなく退院した, 出血性ショックを伴う食道潰瘍では, 緊急開胸し潰瘍上下での食道結紮が, 安全に手術を施行する上での1つの手段と思われた.
  • 中村 真之, 村上 卓夫, 城野 憲史, 林 弘人, 内迫 博幸, 草薙 洋, 鈴木 敞
    1991 年24 巻8 号 p. 2201-2205
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性.嚥下困難を主訴として近医受診, 上部消化管透視および内視鏡検査で食道と胃の病変が指摘された. 組織学的に食道の病変に関しては扁平上皮癌と診断されたが, 胃の病変に関しては悪性所見は得られなかった.食道癌および胃粘膜下腫瘍の診断にて手術を施行したところ, 術後, 組織学的に食道癌の胃壁内転移と診断された.
    食道癌の胃壁内転移は比較的にまれであり, その特徴および対応を中心に文献的考察を行った.
  • 滝口 哲, 渡辺 清朗, 川上 克彦, 本多 光弥
    1991 年24 巻8 号 p. 2206-2210
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Alpha-fetoprotein (AFP) 産生胃癌の報告は多いが, その早期例は, 国内では5例の報告をみるにすぎない.われわれは58歳男性の1例を経験した.主訴はなく, 検診の胃透視にて胃前庭部に隆起性病変を指摘され, 内視鏡検査にて, Borrmann 3型病変で, 生検組織は高分化型管状腺癌と判明した. 術前検査で, carcinoembryonic antigen (CEA) 軽度上昇とAFP上昇がみられた.胃亜全摘術とR2リンパ節郭清を行った.切除標本ではIIa+IIc早期胃癌で, 粘膜層は主に中分化腺癌でCEA染色陽性, 粘膜下層は主に低分化腺癌でAFP染色陽性を示した.末梢血中CEA, AFP値は術後2か月で正常に復した.術後10か月経過し, 肝転移や再発の徴候なく生存中である.
  • 真次 康弘, 高橋 信, 吉岡 伸吉郎, 岡島 正純, 田代 裕尊, 豊田 和広, 正岡 良之, 江藤 高陽
    1991 年24 巻8 号 p. 2211-2215
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃切除後の胃空腸吻合部に発生したポリープ状の粘膜隆起病変は, 1965年のNikoraiらのgastritis cysticaという報告に始まり, 現在ではLittlerら (1972年) のいうgastritis cystica polyposa (以下GCPと略す), あるいは古賀ら (1976年) のいうstomal polypoid hypertrophic gastritisといわれている. 最近になり, CCPを母地として発生したと思われる吻合部残胃癌が報告されるようになり, その発生機序について関心が持たれている. 今回われわれは, 十二指腸潰瘍にて胃切除 (Biriloth II法) 後, 36年目に発見された吻合部早期残胃癌の1例を経験したので報告する.症pllは71歳の男性で, 胃空腸吻合部に全周性の無茎性ポリープ様病変を認め, 組織学的には幼若な胃小寓上皮の過形成と幽門腺類似の粘液腺の過形成および嚢胞化が特徴的で, CCPと考えられた. さらに病巣の一部には高分化型腺癌が散在しCCPを母地として発生した吻合部早期目癌と考えられた.
  • 近藤 啓史, 草野 満夫, 山下 晃史, 棟方 隆, 葛西 眞一, 江端 英隆, 水戸 廸郎, 黒川 洋, 原田 一道
    1991 年24 巻8 号 p. 2216-2220
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Zollinger-Ellison症候群 (ZES) は本邦では比較的まれな疾患であり, また膵外性の報告例も少なく, 十二指腸原発例の報告pllは1989年末までで18例に認められるに過ぎない.われわれは選択的血管造影および経皮経肝的問脈内カテーテル法 (PTPC) による門脈採血が局在診断に有用であり, かつ治癒切除と考えられる十二指腸原発ZESの1例を経験したので報告した.症例は57歳, 男性で胃潰瘍で胃切除を受けている.主訴は心笛部痛と下血で入院となった.諸検査により吻合部潰瘍と高ガストリン血症を認め, ZESを疑診した.選択的血管造影およびPTPCによる門脈血中ガストリン値により, 十二指腸あるいは膵頭部のガストリノーマと診断し, 原発巣の切除とともに12, 13番のリンパ節郭清を施行した.病理の結果, 十二指腸原発ZESでリンパ節転移を伴っていた, 本症例は治癒切除と考えられ, 術後5年の現在, 再発の兆候もなく, 健在である.
  • 奥田 康司, 谷脇 智, 安藤 和三郎, 重富 和治, 松本 敦, 牟田 幹久, 馬田 裕二, 才津 秀樹, 中山 和道
    1991 年24 巻8 号 p. 2221-2225
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対し, 従来の肝流入血遮断法に併用して, パルーンカテーテルによる選択的肝静脈遮断を行って肝中央2区域切除を施行した. カテーテルは術中経肝的に超音波ガイド下に経皮経肝的門脈造影の際のカテーテル挿入手技に準じて, 右および中肝静脈それぞれに挿入した. 切除線右側の右肝静脈に沿った切除の際は, 肝門部でのグリソン氏輪右枝遮断に併用してバルーンによる右肝静脈根部の遮断を, 切除線左側の中および左肝静脈近傍に沿った切除の際は, Pringle法による流入血全遮断に併用して中肝静脈根部の遮断を行うことにより, 良好な無血術野が得られた. 肝授動も肝鎌状間膜の切離のみで切除しえた. 術中出血量は1,100mlで, 術後の肝機能推移も良好であり, 本法は系統的切除あるいは腫瘍が主幹肝静脈に接して存在する場合などで, 肝切除の際, 肝静脈からの出血が予想される例には有用な方法と思われた.
  • 吉田 順一, 山崎 晋, 幕内 雅敏, 高山 忠利, 小菅 智男, 山本 順司, 長谷川 博, 高安 賢一, 広橋 説雄
    1991 年24 巻8 号 p. 2226-2230
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝海綿状血管腫が増大した2切除例において, コンピュータ断層撮影を用いて増大過程を定量的に記録しえた. 症例1は40歳女性で, 3年半の間に径は4.6cmから7.2cmに, 体積は58mlから244mlに増加した. 症例2は67歳男性, 10年半の間に径は7.5cmから17cmに, 体積は123mlから1,434mlに増大した. 2例とも血管腫が増大し続けたので手術を行った. 肝血管腫が増大する経過を定量的に記録した点は文献上珍しい. 肝血管腫はこのように増大する場合があるので, 長期間の経過観察が必要である.
  • 安井 元司, 安藤 修久, 野崎 英樹, 遠山 道正, 片岡 将, 末永 昌宏
    1991 年24 巻8 号 p. 2231-2235
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    近年肝細胞癌の早期発見に伴い, 肝切除症例が増加している. 一方, 術後の残肝再発も多く, 予後を左右する. 今回われわれは, 肝左葉切除後の残肝再発に対し3回の追加切除を行った症例を経験したので報告する. 症例は53歳・男性でS2からS4に存在する肝硬変併存肝細胞癌に対して肝左葉切除を行い, 約15か月後にS6に残肝再発を切除した. その17か月後S7・S8の再発を右開胸開腹にて切除した. さらに10か月後S6の再発を切除した. 初回手術より5年7か月経過した現在, 健在である. 肝硬変症例は元来癌を発生しやすく切除後注意深い追跡が必要である. Alpha-fetoprotein (AFP) 単独では不十分でultra-sonography (US) ・computed tomography (CT) の組合せが重要である. 再切除に際し肝機能が初回手術時に比べて変化が少ないことが条件で, 癒着剥離操作で大量出血が予想される. したがって丁寧な剥離と十分な視野の確保, 特に開胸による経横隔膜的切除も有用と考える.
  • 都築 俊治, 川田 光三, 上田 政和, 高橋 伸, 中安 邦夫, 石井 裕正, 平松 京一, 田代 征夫
    1991 年24 巻8 号 p. 2236-2240
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝静脈から右心房にわたる腫瘍栓を有する肝細胞癌は切除不能と考えられ, 患者は短時日の間に死亡するのが常であった. これらの患者を手術するためには, 体外循環下に肝切除と腫瘍栓の除去を行わなければならないが, 種々の困難な問題がある. 左葉内側区域に直径4cmの腫瘍を有する57歳の男性の肝硬変併存肝細胞癌患者に中肝静脈から右心房に及ぶ腫瘍栓が発見された. 体外循環下に左葉内側区域と右葉前区域の一部切除とともに腫瘍栓の除去が行われた. 患者は術後経過良好で退院したが, 残存肝の再発のため術後5か月で死亡した. このような手術が可能であることが判明したが, 今後の問題は長期生存例が得られるか否かである.
  • 藤岡 ひかる, 小無田 興, 釣船 崇仁, 近藤 敏, 松尾 繁年, 富岡 勉, 元島 幸一, 角田 司, 山本 賢輔
    1991 年24 巻8 号 p. 2241-2245
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆嚢炎症性ポリープの中で特にWHOが提唱したfibrous polypと考えられる1例を経験した.症例は54歳男性で, 人間ドックの腹部超音波検査にて胆嚢ポリープを指摘された. 内視鏡 的逆行性膵胆管造影, 血管造影で胆嚢腺腫を疑ったが胆嚢癌も否定できず胆嚢摘出術兼肝床切除術を施行した. ポリープ様病変は20×17×15mmで桑実状であり, 病理学的検索ではWHOの提唱するfibrous polypの診断基戦具備していた. 本症は極めてまれな疾患であるが, 自験例のように20mm以上のこともあり胆嚢癌との鑑別において注意を要する病変と考えられた.
  • 小林 建司, 安井 健三, 安江 満悟, 宮石 成一, 中里 博昭, 宮田 完志, 石川 覚也, 服部 龍夫
    1991 年24 巻8 号 p. 2246-2250
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    5年間臨床像がほぼ変わらず, さらにはいわゆる早期の下部胆管癌であった1例を経験した.症例は51歳の男性で主訴は心窩部痛. 1985年総胆管切石術が施行された際, 下部胆管の腫 瘍が指摘された. そのときは生検の結果adenomaであり, 患者の希望もあったので経過観察となった. 今回1990年1月心窩部痛があり, 諸検査の結果同部位の腫瘍が痛みの原因と診断され当院に紹介入院した. 術前の生検では, 一部異型度が強いpapillary adenomaと診断されたが, 癌の可能性も否定できず, 臨床症状があることから膵頭十二指腸切除を施行した. 病理組織検査ではfibromascular layerに一部浸潤したadenocarcinomaであった. 下部胆管腫瘍に対する術前診断と手術適応について考察した.
  • 長見 晴彦, 田村 勝洋, 野原 隆彦, 山本 剛史, 中川 正久, 中瀬 明
    1991 年24 巻8 号 p. 2251-2255
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    今回, 私たちはadenomyomatosis (ADM) によって形成された二房性胆嚢に胆石症と早期胆嚢癌を合併した症例を経験した.症例は72歳, 女性で術前endoscopic retrograde chotangiography (ERC) にて二房性胆嚢に合併した胆石症と診断し, 胆嚢摘出術を施行した.摘出胆嚢底部には径2.5cm大の結石を認め, また切除標本の病理組織学的検索にて胆嚢底部には慢性胆嚢炎像を, 胆嚢体部にはRokitansky Aschoff sinus (RAS) の増殖によるsegmental ADMを認め, さらにADM部より頸部側では約4.7cm×4.0cm大の範囲に拡がる早期胆嚢癌巣 (well differentiated adenocarcinoma: m RAS ss) を認めた.文献的にはADMと胆嚢癌の合併報告例は本邦では自験例も含めて6例の報告があるのみで, 自験例を除く5例はいずれも癌巣がADMより底部側に存在しているのに対し, 自験例のみADMより頸部側に存在しておりADMの癌化説を示唆する症例である.
  • 安積 靖友, 宮村 一雄, 古谷 義彦, 中山 伸一, 堀田 芳樹, 田頭 幸夫
    1991 年24 巻8 号 p. 2256-2260
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵頭部と体部に多発した漿液性膵嚢胞腺腫を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は49歳の女性で, 腹部不快感を主訴として来院, 腹部超音波検査にて膵頭部に直径3cmの, 体部に直径1.5cmの多発性嚢胞像が認められ, 精査の結果多発性の漿液性膵嚢胞腺腫を疑い, 膵頭体部十二指腸切除術を施行した.切除標本を検索すると膵頭部の腫瘤は5×3×4cmで周囲の膵実質とは明瞭に区別されており, 漿液性の液を含む2~16mmの多数の嚢胞からなり, 主膵管は軽度狭窄が認められた.膵体部の腫瘤は直径1.5cmで1~6mmの多数の嚢胞から構成されていた.病理組織学的には膵頭部と体部に多発した漿液性膵嚢胞腺腫と診断した.
    膵頭部と体部に多発した漿液性嚢胞腺腫の1例を報告し, 病理所見と対比して画像診断上粘液性嚢胞腺腫との鑑別点について文献的に考察した.
  • 青柳 慶史朗, 八塚 宏太, 梅谷 博史, 中川 鉄朗, 矢野 正二郎, 藤井 輝彦, 荒木 るり子, 小野 博典, 藤政 浩志, 掛川 暉 ...
    1991 年24 巻8 号 p. 2261-2265
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性, 主訴は右上腹部痛で, 胆石症および腹腔内腫瘍の診断にて開腹を行った.
    開腹所見にて大網にやわらかくもろい粘液腫状で易出血性の18×17cmの腫瘍性病変を認め, 肝左葉外側区域前下面および胃体部前壁に播種性転移を認めた.手術は腫瘍を十分含め大網部分切除, 肝左葉外側区域部分切除, 胃部分切除および胆嚢摘出術を行った.術後病理組織にて平滑筋肉腫と診断された.現在術後9か月で再発の徴候なく生存中である.
    大網原発の腫瘍は非常にまれであり, 大網原発の平滑肉腫は検索しえたかぎりでは本例で本邦26例目であった.本腫瘍のほとんどが10cm以上の腫瘤として認められることが多く, 予後不良とされてきたが, 近年外科的に切除ができたとの報告がみられるようになり, 転移巣を含めて充分な外科的切除を行えば予後は期待できると考えられた.
  • 安永 親生, 井上 文夫, 森 康昭, 古賀 敏朗
    1991 年24 巻8 号 p. 2266-2270
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    消化管の原発性AAアミロイドーシスの1例を報告する, 虫垂切除歴のある66歳の男性, 癒着性イレウスを疑い開腹術を施行.開腹時, 明らかな閉塞部位はなく小腸全体が著明に拡張し, 腸管壁のうっ血, 浮腫を認めた.また, 腸間膜根部に小指頭大の軟らかいリンパ節を多数認め, この部より生検を行った.病理組織学的にこの部のリンパ節にAA型アミロイドの結節性沈着を認め, 消化管アミロイドーシスにより発症したイレウスと判明した.術後の検索により大腸および胃, 特に胃には重度のアミロイド沈着を認めた.アミロイドーシスの原因疾患は明らかでなく原発性のAAアミロイドーシスと診断した.イレウスは術後, 長期にわたり持続し, 完全経静脈栄養による管理, Dimethyl Sulfoxideの投与などにもかかわらず, 消化管出血, 電解質異常をきたし死亡した.本例のごとく, 原因不明のイレウスにおいてはリンパ節生検が有用となる場合があると考えられた.
  • 日下 貴文, 島崎 孝志, 川嶋 旭
    1991 年24 巻8 号 p. 2271-2274
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腸間膜平滑筋腫を併存した家族性大腸ポリポーシスの1例を経験した.症例は34歳の女性で, 2年前に家族性大腸ポリポーシスにて全結腸直腸切除兼回腸瘻造設を受けていた.手術後17か月目に腹部腫瘤を指摘され, 腫瘤摘除を試みたが単開腹に終わった.生検の結果は腸間膜の平滑筋腫であった.
    Gardner症候群は, 消化管以外にも全胚葉由来の種々の臓器に種々の病変が併存することが知られているが, 腸間膜平滑筋腫が併存することはまれである.Gardner症候群に随伴する良性腫瘍性病変の発生原因として確定的なものはないが, 組織の修復機転のどこかに先天的異常があり, そのために組織の異常増殖が生じるとの推論がある.本症例では, 手術操作により腸間膜に機械的刺激が加わり, 組織の異常増殖が生じ, 腸間膜平滑筋腫が発生した可能性が考えられる.
  • 松田 哲朗, 赤木 重典, 能見 伸八郎, 藤原 郁也, 戸田 省吾, 牧野 弘之, 中路 啓介, 内藤 和世, 大森 吉弘, 岡 隆宏
    1991 年24 巻8 号 p. 2275-2279
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌に併発した閉塞性大腸炎の3例を経験し, 症例の概要を報告するとともに若干の文献的考察を加えた.
    症例1.65歳男性.浸潤潰瘍型直腸癌の口側に33cmの正常粘膜を介し長さ20cmの全周性の浅い潰瘍性病変を認めた.症例2, 58歳女性, 限局潰瘍型S状結腸癌の口側に12cmの正常粘膜を介し長さ33cmの縦走潰瘍, 顆粒状隆起, 浮腫を伴う浅い潰瘍性病変を認めた.症例3, 58歳女性, 限局潰瘍型S状結腸癌の口側に7cmの正常粘膜を介し長さ32cmの縦走潰瘍, 浮腫, 発赤を伴う浅い潰瘍性病変を認めた.
    本症の術前診断はその閉塞性病変のため困難なことが多いが, 潰瘍性病変は残存なく切除することが必要である.そのためにも, 術中内視鏡による口側腸管の精査や, 摘出時の標本検索など, 閉塞性大腸疾患の手術の際には本症の合併を常に念頭において対処すべきである.
  • 武田 晋平, 多幾山 渉, 高嶋 成光, 万代 光一
    1991 年24 巻8 号 p. 2280-2283
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    壁外に腫瘤を形成する特異な進展形式の大腸癌は比較的まれであり, 症例報告を散見するにすぎない.今回われわれは壁外性に腫瘤を形成し, 子宮体部に浸潤をきたしたS状結腸癌の1切除例を経験した.症例は65歳の女性で下血を主訴とし, 注腸透視ではS状結腸に約9cmにわたり軽度の全周性の狭窄と, 腸管の壁外からの圧排が認められた.大腸ファイバーでは, 狭窄部の粘膜は浮腫状で, 生検では悪性細胞は認められなかった.腹部超音波, 下腹部computed tomography (CT) では子宮体部背側にS状結腸および子宮筋層内に浸潤する5cm大の不規則な形状の腫瘤が認められた.手術はS状結腸および子宮, 両付属器を切除した.病理組織学的検査では腫瘤は中分化腺癌の像を呈していた.壁外に腫瘤を形成する大腸癌の注腸透視上の特徴はlong segmentの腸管の全周性の狭窄および腫瘤による腸管の圧排所見とされている.また腫瘤の診断にはCT, 腹部超音波検査が有用であった.
  • 赤松 大樹, 亀頭 正樹, 藤田 宗行, 大川 淳, 吉龍 資雄
    1991 年24 巻8 号 p. 2284-2287
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    成人の腸重積症は全体の約5%を占めまれである.臨床症状としては腹痛, 腹部膨満, 下血などが多い.今回われわれは多量の粘液下痢のために水分電解質異常および著明な低蛋白血症を呈したS状結腸癌による腸重積の1例を報告した.症例は64歳の男性.入院時多量の粘液下痢による脱水のために全身状態は不良であった.下痢が消失した後に施行したS状結腸内視鏡では明らかな病変を認めず, 外来で経過観察していた.3か月後に同様の症状にて再入院.大腸内視鏡検査にてS状結腸癌による腸重積と診断しS状結腸切除術を施行した.
    腸重積で粘血便が主訴となることは多いが, 自験例では重積部位が肛門に近く多量の粘液が結腸による再吸収を受けずに体外に排出され, 大腸絨毛性腫瘍におけるdepletion syndromeに似た病態を呈したものと考えられる.重積時には内視鏡検査により容易に診断されるが, 本症例のように自然解除した場合には注意が必要である.
  • 村上 泰
    1991 年24 巻8 号 p. 2288-2292
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    頸部食道癌 (下咽頭癌を含める) の治療における問題点をまとめて報告した.
    粘膜下リンパ流の方向特異性によって, 初発領域別に進展方向に差があり, 特に粘膜下不可視病変の進展度が異なっていることを念頭において, 切除範囲を決める必要がある.
    頸部リンパ節への転移頻度が高いことから両側頸部郭清術の必要性を強調した.
    術後照射および維持化学療法の必要性について述べた.
  • 井手 博子
    1991 年24 巻8 号 p. 2293-2298
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1976年から1990年9月までに切除した下咽頭頸部食道癌64例を対象とし, 胃管再建例の有用性を検討した.食道全摘を行ったのは39例で, 平均年齢は64歳, Ce~CeIu癌を中心に施行された.根治性の面から食道全摘も部分切除も適応に差を認めなかった.再建臓器は食道全摘例の92%, 全切除例の56%に胃管が用いられた.一方, 遊離空腸移植は全切除例の38%に行われた.食道抜去胃管再建例の合併症発生率は31%で遊離空腸移植例の18%に比べやや高率であった.食道全摘例の断端癌遺残率は低く特に肛門側癌遺残はない.食道全摘例の33%に多発癌をみた.下咽頭頸部食道癌C≧1切除例の5生率は食道抜去胃管再建例で41.7%, 遊離空腸移植例では26.2%であった.多発癌合併例が多い点から, 頸部食道癌の再建法として胸部食道抜去し胃管で再建する方法は, 胃に病変がなければどこの施設でも容易かつ確実に行える有用な再建法である.
  • 藤巻 雅夫
    1991 年24 巻8 号 p. 2299-2302
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    頸部食道癌に対する食道再建臓器として, 進行度が低く良好な予後が期待される症例や胃切除後の症例などに対しては, 再建経路のいかんにかかわらず十分な長さの再建臓器の間置が可能である点, 胃を温存し術後の栄養面の向上を期待できる点などにより, 先ず有茎結腸の利用を第1選択としている. 腹腔内の状況によって血管茎を選択し, 可能な限り横行結腸片, 右側結腸片を用いて順蠕動性の配置を行うが, 場合により左側結腸片の逆蠕動性配置も考慮しておかねばならない. 結腸片の作成にあたっては, 血管走行異常も時に経験されるため, transilluminationによって血管走行を確認した後, 血管茎を選択することや, 再建に必要な利用結腸片の長さを辺縁動脈に沿って測定すること, 結腸片挙上時に血管茎にゆとりをもたせることが重要である. また結腸片をたるみや捻れのないように挙上し, 下咽頭部の吻合では, 吻合臓器に応じて口径差を補正することが必要である.
  • 波利井 清紀
    1991 年24 巻8 号 p. 2303-2307
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    下咽頭・頸部食道癌切除後の頸部食道の再建は, 古くから外科医にとっての重要な課題の1つであった. 血管吻合による遊離腸管の移植は最近理想的な食道再建法の1つとして推奨されているが, 本法は歴史的に見て1959年Seidenbergら, 1962年中山らにより既に開発されていたのは有名である. しかし, 裸眼による直径3mm程度の血管吻合は不確実で手技的にも困難であったためか一般化するには至らなかった.
    マイクロサージャリーの発達は3mm以下の細小血管の吻合を確実かつ容易なものとし, この利用により遊離腸管移植も劇的な復活を遂げ頸部食道再建の標準的な術式の一つとして推奨されるようになった. 本稿では, 著者らが1982年以来経験した116例の腸管移植 (空腸: 115例, 回腸: 1例) を分析するとともに, 遊離空腸移植の手術手技の要点を紹介する.
  • 堀井 勝彦, 木下 博明, 広橋 一裕, 久保 正二, 岩佐 隆太郎, 藤尾 長久, 李 光春, 中田 浩二, 田中 宏, 塚本 忠司, 半 ...
    1991 年24 巻8 号 p. 2308
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
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