抄録
大腸癌に併発した閉塞性大腸炎の3例を経験し, 症例の概要を報告するとともに若干の文献的考察を加えた.
症例1.65歳男性.浸潤潰瘍型直腸癌の口側に33cmの正常粘膜を介し長さ20cmの全周性の浅い潰瘍性病変を認めた.症例2, 58歳女性, 限局潰瘍型S状結腸癌の口側に12cmの正常粘膜を介し長さ33cmの縦走潰瘍, 顆粒状隆起, 浮腫を伴う浅い潰瘍性病変を認めた.症例3, 58歳女性, 限局潰瘍型S状結腸癌の口側に7cmの正常粘膜を介し長さ32cmの縦走潰瘍, 浮腫, 発赤を伴う浅い潰瘍性病変を認めた.
本症の術前診断はその閉塞性病変のため困難なことが多いが, 潰瘍性病変は残存なく切除することが必要である.そのためにも, 術中内視鏡による口側腸管の精査や, 摘出時の標本検索など, 閉塞性大腸疾患の手術の際には本症の合併を常に念頭において対処すべきである.