十二指腸膜様狭窄症はまれな先天性疾患であるが, 多くは幼児期に診断され成人例は少ない.今回, 幼児期に発症しながら成人になって初めて診断された十二指腸膜様狭窄症を経験したので報告する.症例は24歳女性, 幼児期より頻回に嘔吐を繰り返していたが, 成長障害がなかったため放置していた.1989年7月, 腹痛で来院, 上部消化管造影および内視鏡検査で十二指腸内のリング状透亮像と膜様物を認め十二指腸膜様狭窄症と診断した.開腹術下に膜様物切除術を施行し, 術後経過良好である.本症例では膜様物に副膵管が開口しており, Vater乳頭は膜様物近傍の肛門側に存在した.膜様物切除に際しては膜様物近傍に開口する胆管, 膵管の損傷を防止するために術中secretin静注や胆嚢圧迫試験により開口部を確認することが重要と考えられた.