1993 年 26 巻 10 号 p. 2499-2502
胃癌組織内estrogen receptor (ER), progesteron receptor (PgR) の局在が新しい胃癌の予後因子になりうるかどうか検討し, さらにER, PgRの予後不良因子の生物学的意義ER, PgRを介した内分泌療法の効果について検討した.その結果,(1) 胃癌組織内のER, PgRの有無と予後がリンパ節転移有無や癌組織型よりよく相関した.(2) ER陽性胃癌のproliferating cell nuclear antigen (PCNA) 陽性率がER陰性胃癌に比べ高く, 癌細胞の増殖能がER陽性胃癌で高い傾向を示した.(3) 治癒切除スキルス胃癌40例の術後に, 封筒法で内分泌化学療法群と化学療法群にわけて, 5年累積生存率を検討したところ, 内分泌化学療法群の予後は化学療法群に比べ予後良好であった.以上, 胃癌組織内ER, PgRは胃癌の予後因子の1つになりうると考えられ, 予後不良の性ホルモンレセプター陽性胃癌の予後向上に内分泌療法の有用性が示唆された.