日本消化器外科学会雑誌
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胆嚢癌の生物学的悪性度とその臨床的意義
田端 正己小倉 嘉文井戸 政佳高橋 幸二野口 孝川原田 嘉文水本 龍二
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1993 年 26 巻 10 号 p. 2503-2507

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抄録

胆嚢癌切除72例の主病巣のホルマリン固定後パラフィン包埋切片を用いて, 癌細胞核DNA量をflow cytometryにて測定するとともに, 増殖細胞核抗原 (PCNA), c-erbB-2, c-myc, K-ras, p53, fibronectin (FN), laminin (LN), tenascin (TN) をそれぞれABC法にて免疫組織化学的に染色し, これら各種分子生物学的パラメーターの臨床的意義や予後因子としての有用性について検討した.AneuploidやK-ras陽性例は進行例に多く, 累積生存率もDiploidやK-ras陰性例に比し有意に不良であって, 特にK-rasは従来の組織学的因子では困難であった癌深達度ss以上の進行胆嚢癌の予後判定に有用であった.またAneuploidでかつPCNA陽性例, c-mycとp53の同時陽性例, あるいはTN陽性でかつFN陰性例は極めて生物学的悪性度が高く, いずれも切除後2年以内に死亡していた.さらにこれらの因子のうち, PCNA標識率や細胞外マトリックスは相対非治癒以上の切除後の再発時期や再発様式の判定にも有用であった.

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