日本消化器外科学会雑誌
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m, sm食道癌の治療
外科手術と内視鏡手術の接点
幕内 博康町村 貴郎水谷 郷一島田 英雄菅野 公司千野 修徳田 裕杉原 隆佐々木 哲二田島 知郎三富 利夫
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1993 年 26 巻 10 号 p. 2517-2521

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抄録

従来,食道癌即外科手術であったが,内視鏡手術の発展普及とともに外科手術と内視鏡手術の接点が問題となってきた.食道の早期表在癌の発見例が1986年頃から急増し,食道表在癌切除例の解析から,ep~mm2癌では脈管侵襲やリンパ節転移は認められず,mm3~sm1癌では脈管侵襲が33-3~44.4%,リンパ節転移が11.1%で,sm2~sm3癌では66.7~88.9%の脈管侵襲と25.0~44.4%のリンパ節転移を有することが判明した.予後もep~sm1までは5年生存率100%で,sm2では58.9%,sm3では54.2%であった.
外科手術と内視鏡手術の接点はmm3~sm1にあり,原則的には頸胸腹部3領域リンパ節郭清を伴う外科手術を行うが,その約80%は内視鏡的粘膜切除による局所切除で根治が得られる.全身状態不良例や高齢者では,リンパ節転移が明らかでなければ,手術侵襲が大きく,術後のquality of lifeを損う外科手術を避けて内視鏡手術を選択すべきと考える.

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