切除早期胃癌252例を対象にリンパ節転移率の検討を行った後, 内視鏡的粘膜切除 (EMR) を51例に施行し, 次の結果を得た.
(1) Ul (-) のm癌ではリンパ節転移が認められず, EMRの積極的適応となる.(2) EMRの技術として, 反復把持法を用いると, 切除粘膜の長径は平均2.2cmで, 胃内のほとんど全部位でEMRが可能であった.(3) 合併症としては穿孔1例と出血2例を経験したので, 防止対策を検討した.(4) 完全切除33例の再発は0%であるのに対し, 分割切除例では, 4-18か月以内に50%が再発した. (5) EMR前後の比較で, EMRによるQOLの低下は認めなかった.
EMRの安全適応限界は, EMR切除標本で, 深達度m, 病巣内にU1 (-), 断端 (-) であり, 患者のインフォームドコンセントを得て, 内視鏡的経過観察の条件が得られれば, 胃切除術に勝る根治療法とみなしうる.