日本消化器外科学会雑誌
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胆管細胞癌と鑑別困難であった下大静脈と胆管への浸潤を伴う直腸癌肝転移の1切除例
新井 正明大和田 進森下 靖雄
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1994 年 27 巻 3 号 p. 829-833

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抄録
下大静脈と胆管に浸潤し, 胆管細胞癌と鑑別困難であった直腸癌肝転移の1切除例を報告する.症例は54歳の女性で, 1989年10月に直腸癌で低位前方切除術を受けた.1992年5月に肝腫瘍を指摘され, 腫瘍マーカーはCEAとCA19-9が上昇していた.CTでは尾状葉から肝後上区域に辺縁不明瞭な低吸収域を認め, 超音波では辺縁不整な高エコー像で, 下大静脈と肝内胆管への浸潤が疑われた.内視鏡的逆行性胆管造影では前・後区域枝分岐部に陰影欠損を認め, 後区域枝は途絶していた.動脈造影では淡い腫瘍濃染を認めた.胆管細胞癌または非定型的な直腸癌の肝転移の疑いで手術を行った.下大静脈を25分間遮断し, 拡大肝右葉切除・下大静脈前壁合併切除を施行した.下大静脈欠損部は馬心膜でパッチ縫合閉鎖した.摘出標本の割面で腫瘍は4.0×3.5cm大で, 組織学的に下大静脈と胆管に浸潤した直腸癌の肝転移と判明した.
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