日本消化器外科学会雑誌
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フィンガーピース法で求めた血中ICG消失曲線の波形が示す臨床的意義
保谷 芳行藤田 哲二桜井 健司
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1994 年 27 巻 9 号 p. 2099-2106

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抄録

フィンガーピース法を用いて健常肝10例, 肝硬変10例, 閉塞性黄疸5例および転移性肝癌広範囲切除例5例に対して, 血中のindocyanine green (ICG) 消失曲線を求め波形の特徴と病態との因果関係を検討した.初期ピークの高さ (a) は機能的肝容量を反映し, 血清アルブミン (Alb) およびコリンエステラーゼ値 (ChE) と正の相関があった (Alb: r=0.341, p<0.05, ChE: r=0.715, p<0.005).再増加ピーク (b) は門脈大循環シャントの有無を表現すると思われ, γ-グロブリンと正の相関があった (r=0.413, p<0.025).減少部分の波形 (d/c) は血中ICGの減少率を表現し, 採血法で求めたR15と正の相関があった (r=0.378, p<0.025).また鋭い初期多峰性ピークと直線的な減少部分 (a≧4, b≧0.05, d/c≧0, 5) を有する波形の出現率は肝硬変で有意に高かった (p<0.001).以上のようにフィンガーピース法で求めたICG消失曲線の波形を解析すると, 肝障害症例における病態の質的診断が可能であった.

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