日本消化器外科学会雑誌
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鈍的膵損傷における腹部理学的所見出現に関与する因子の臨床的検討
瀧島 常雅浅利 靖平田 光博柿田 章
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1994 年 27 巻 9 号 p. 2107-2112

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抄録

自験例59例について, 鈍的膵損傷の腹部理学所見に影響を及ぼす因子を, 腹部合併損傷の有無や膵損傷型分類に関して比較検討した.腹痛を59例中56例 (94.9%) で認め, 膵損傷単独群の22例中20例 (90.9%), 膵および腹部他臓器損傷合併群の37例中36例 (97.3%) で認めた.腹痛を有した56例中, 心窩部痛が33例 (58.9%) であり, この傾向は単独群 (80.0%) が合併群 (47.2%) に比較して有意に高率であった.腹膜刺激症状は59例中33例 (55.9%) に認められ, 1型 (膵挫傷) では, II型 (主膵管損傷を伴わない膵裂傷) やIII型 (主膵管損傷) に比較して有意に低率であった.単独群I型の腹膜刺激症状発現率は単独群III型や合併群I型に比較して有意に低率であった.以上から, 鈍的膵損傷における腹痛部位は基本的に心窩部であり, 腹部合併損傷によって腹痛部位が著明に修飾された.腹膜刺激症状発現には主膵管損傷や腹部他臓器損傷の存在が強く影響を及ぼした.

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