日本消化器外科学会雑誌
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直腸癌における神経侵襲の予後規定因子としての意義に関する検討
上野 秀樹望月 英隆長谷 和生横山 幸生吉村 一克山本 哲久玉熊 正悦寺畑 信太郎玉井 誠一
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1994 年 27 巻 9 号 p. 2126-2134

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抄録

直腸癌治癒切除285症例についての切除病理標本から神経侵襲 (neural invasion: ni) の臨床的意義を検討した.niは80例, 28.1%に認められ, 固有筋層にとどまるもの (S-ni) 8.1%, より深層に認めるもの (D-ni) 20.0%であった.S-ni (+) とni (-) の間に生存率曲線に差はなく, D-ni (+) はこれらと比べ不良であった (p<0.001).またD-niの程度が高くなるにつれ生存率曲線は不良となった.D-ni (+) 群はD-ni (-) 群に比べ再発率は高く, 局所再発率が特に高率であった (35%: 8%, p<0.001).D-ni (-) 症例では側方郭清の有無と局所再発の間に関連を認めなかったが, D-ni (+) 症例では完全側方郭清により局所再発率は低下した.また多変量解析により, D-niには独立した予後規定因子としての意義が示された.D-niの有無は術後予後を占ううえで重要であり, D-niを認める症例においては特に骨盤神経切除を含めた側方郭清の必要性が示唆された.

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