最近10年間に経験した消化器外科手術後に発症した急性肺塞栓症例8例を臨床的に検討した.それらは同期間の手術例の0.07%に相当し, 平均年齢65, 5歳 (55~75), 1例が男性, 7例が女性, また7例が悪性疾患, 1例が胆石症であった.術後の安静解除の時期に呼吸困難, 胸痛, 胸部不快感あるいは急性循環不全の症状がみられ, 心エコーで右心の拡張が認められれば急性肺塞栓症が強く疑われる.肺動脈造影は診断のもっとも確実な方法であり, これを施行した5例全例で塞栓が証明された.8例中5例は線溶・抗凝固療法で軽快したが, 3例は死亡した.そのうち2例は発症後数時間で失ったが, 1例は補助循環下に線溶・抗凝固療法を行い11日間の生存が得られた.
急性肺塞栓症に対しては, 必要なら補助循環を併施し, 強力な循環管理下に線溶・抗凝固療法をまず行うのがよいと思われる.