症例は意識障害を主訴とする73歳の女性.内分泌学的検査上, インスリノーマが疑われたが, 検査では胆石.胆嚢炎が指摘されたもののインスリノーマを診断しえなかった.さらに, 胆石症に対して手術が施行された際の術中検査にても腫瘤は確認できず, 経過観察となった.4か月後, 意識障害にて再入院となった.MRIおよび選択的動脈内カルシウム注入後肝静脈採血法にて局在診断できたので手術を施行した.術中超音波検査で近接した2個の腫瘤が描出され共に核出した.臨床的にはインスリノーマのみが疑われ, 血中グルカゴン値も正常であったが, 切除標本の免疫組織学的検索ではこの2個の腫瘤は, インスリン産生腫とグルカゴン産生腫の異なる2腫瘤であった.インスリノーマおよびグルカゴノーマの2つの膵島細胞腫瘍が併存した非常に興味深い症例と考えられた.