日本消化器外科学会雑誌
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術前門脈枝塞栓術後の肝再生-特に部分胆管結紮下での効果に関する実験的検討
田中 丈二石山 秀一布施 明塚本 長
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1996 年 29 巻 11 号 p. 2098-2105

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抄録

門脈枝塞栓術 (以下, PE) の効果と肝再生, 胆汁うっ滞下でのPEの効果につき検討した.家兎を用い, 部分肝切除, PE, 胆管結紮切離 (以下, BL), PE兼BLの各モデルを作成して検討した.肥大葉の3H-thymidine摂取率 (in vitro) はPE施行後は第1~7日に軽度上昇 (第7日: 229.1±72.0%) したが, 胆汁うっ滞による障害はなかった (205.4±52.5%).胆汁うっ滞下PE後の塞栓葉の萎縮は強く, 第14日非塞栓葉重量 (2.18±0.06%;対体重比) は胆汁非うっ滞下PE後 (1.14±0.04%) より高値だった.門脈枝塞栓および胆汁うっ滞のある部のin vitroでのDNA合成能は第5日に上昇 (356.2±68.2%) し, この部での再生のpotentialは高まっていると思われたが, bromodeoxy-uridine標識率 (in vivo) では再生は認めなかった.以上より部分胆管閉塞下でもPEの効果が期待でき, 塞栓巣の胆道ドレナージは非塞栓葉の再生の点からは, むしろ行わないほうが効果的である可能性が示唆された.

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