日本消化器外科学会雑誌
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肝静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌の切除成績の検討
丸山 千文高崎 健山本 雅一
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1996 年 29 巻 11 号 p. 2106-2110

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抄録

肉眼的に肝静脈腫瘍栓を伴う24例 (HV group) と伴わない442例 (non HV group) の切除成績を比較検討した. 腫瘍栓先進部は, 原発性肝癌取扱い規約によるとVv3;8例, Vv2;13例, Vv1;3例であった. HV groupで門脈腫瘍栓 (67%), 肝内転移 (73%), を有意に高率に併存し, 腫瘍径が大きい傾向にあったが, 年齢, 性, 肝硬変併存率に差を認めなかった. 再発部位はHV groupで肝52%, 肺, 骨ともに4%でnon HV groupと差がみられなかった. 累積生存率では, 3年, 5年生存率が, HV group42.1%, 31.6%, non HV group64.9%, 49.6%で, 5年以降では差がなくなった. 腫瘍栓先進部別で切除成績に差は見られなかった. 門脈腫瘍栓の併存の有無で生存率に差が見られ, 門脈腫瘍栓のない8例中5例 (63%) が3年以上生存した. 以上より肝静脈腫瘍栓は単独では予後規定因子とはならず, 同じ血管侵襲でも門脈腫瘍栓とは区別する必要があると考えられた.

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