症例は66歳の女性. 主訴は腹部膨満感, 左上腹部痛. 腹部は著明に膨満し, 巨大腫瘤を触知した. 腹部computed tomography (以下, CTと略記) などにより, 内部構造が不均一な充実性腫瘤を認め, 胃や腸管などを強く圧迫していた. 患者は1年6か月前にも腹部CTが施行されているが, この時には腹腔内に腫瘤は認められていない. また, 4か月前の上腹部消化管造影でも圧迫所見などは認められていない. 腹腔動脈造影で, 腫瘍は拡張した左胃大網動脈より栄養されており, 大網悪性腫瘍の診断にて開腹術を行った. 腫瘍は大網より発生し, 大きさ30×25×10cm, 重量3,600gであった. 病理組織学的には多形性の著明な紡錘形腫瘍細胞の増殖により形成される平滑筋肉腫であり, 多数の核分裂像もみられることから腫瘍の急速な発育が示唆された. 本症は早期発見が困難で予後は悪い. 特徴的な症状を伴わず, 急速に発育することが一因であり, 積極的な検査が必要であると考えられた.