日本消化器外科学会雑誌
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術後早期に巨大腹壁腫瘤として再発した肉腫様肝癌の1切除例
森田 康金丸 太一太田 恭介山本 正博斎藤 洋一林 祥剛伊東 宏
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1996 年 29 巻 11 号 p. 2141-2145

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抄録

肉腫様肝癌は比較的まれな疾患である. 本腫瘍の特徴は増殖速度が速く, 早期より血行性またはリンパ行性に転移をきたすことで, 現在までに切除例の報告はない. 今回, 我々は肝切除後約2か月で巨大腹壁腫瘤として再発した肉腫様肝癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は65歳の男性で, 上腹部痛を主訴に来院し, 画像診断にて肝左葉外側上区域に径4cmの腫瘍を認め, 術前低分化型肝細胞癌の診断にて肝部分切除を施行した. 病理組織学的所見で腫瘍細胞は紡錘形で充実性に増殖しており, 肉腫様肝癌と診断した. 術後1か月目よりドレーン挿入部より出血を認め, 同部に鵞卵大の腫瘤を認めた. さらに術後2か月目には腹壁外へ発育する小児頭大の巨大腹壁腫瘤となり術後141日目に死亡した. 本症例のdoubling timeは11.9日と短く, 肉腫様肝癌は悪性度の高い腫瘍であり, 可能な限り広範な肝切除が必要であると考えられた.

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